今週の特集は、青田買いでも注目の一作でした『バビロン』です。「読む劇薬」といわれた原作をなぞる衝撃の展開と、映像ならではの鮮烈な演出。5年後、10年後にも強く印象に残る作品となる予感がますます強まっています。第2章の完結直前、第6話「作戦」まで視聴したタイミングでの特集です。
■原作もすごいけど、アニメならではの演出もヤバい
美樹「原作を読んでしまうと、アニメは結構スピーディーな感じはあるんですけど。でも、時系列をわかりやすく構成したり、アニメにしかできない表現という点では、曲世の表現はやっぱり原作にはない、すごい演出だなと思いますね」
くむ「曲世愛は、“魔性の女”とひとことで言っていいのかどうかわからないくらい、深いヤバさを持っている女だとは思うんですけど。あれは、映像化するとこうなるんだ、みたいな感じですか」
美樹「2話の聴取の時とか。箱根のシーンを(アニメでは)聴取の中に入れ込んでくるじゃないですか。正崎が質問しているのは聴取中なのに、箱根で旅館にいる曲世が答えるみたいな。あの演出とかはもちろん原作にはないので、震えましたね」
くむ「その辺にいそうな人に見えて、実はああだったというのが曲世のヤバいところなのかなと思うので。これ、実写だったらどうなのかな、と思う部分はありますよね」
美樹「小説で読むと自分の想像力で補っている部分があると思うので、映像ではどうやって“魔性感”を出すんだろうというのは気になっていたんですけど、上手だなと思いますね。あの、何人も分かれて誘惑してくる感じとかも、さすがだなあと思って。いいアニメ化だなと思って見ています」
■年齢も人格も超越した、底なしの魔性のヤバさ
小宮「ゆきのさつきさんの演技って、特徴的というか個性があるなと思っていたんですけど、(曲世役で)その個性を殺して、わからないようにするというのは相当の技術がいるとおもうので。演技すごいなと思ってみていました」
くむ「多分、すごく考えて考えて“演じ分け”じゃない曲世愛をやろうとしたんでしょうね。だって声聞いただけで誘惑されそうになりますもんね」
たま「ヤバいなって感じしますよね、声だけで」
くむ「そう。魔性の女キャラ、みたいな声の演技ってあると思うんですけど、違うよね。このフツウ感」
たま「フツウなんだけどヤバいんですよね。ゆきのさんてすごくカラッとしていて、どっちかといえばお母さんみたいな気質のキャラクターを演じることが多いかなって思っていたので。こんなに隠の気を放つキャラクターをやるんだ、っていうのがめちゃくちゃ衝撃でした」
くむ「隠ですよね。淫というか、なんというか。しかも設定は23歳ですから」
たま「10歳くらいサバ読んでませんか、という空気感ですよね。でも若さもある」
くむ「そうそう、若さも持ってるんだよ、演じている人物によっては」
たま「瑞々しさみたいなのは存在しているのに、歳を超越した何かみたいなものもあるという。すごい絶妙なキャラメイクしていると思います」
■今の世にとって、それが救いになってしまうかもしれないヤバさ
たま「なにかしら、フックに引っかかる人はいると思うんですよね。だから読む劇薬なんて言われているわけで」
くむ「確かに。齋開化が言っていることは全然間違ってないよね、という人もたくさんいるんじゃないかと思いますし」
たま「例えば、死を選ぶのもそんなに悪いことではないんじゃない、という世界観になったとして。じゃあ、健全で健康な人が死というものに対して魅力を感じないかと言われたら、感じるんですよ、多分」
くむ「しかもですよ、今のところ劇中では、飛び降りたり首を吊ったり、そういう今までのやり方を選んでいますけど。そこに第1章で出てきたあの新薬、ニクスが…。まあ自殺薬ですよね。ふつうの睡眠薬のように眠れて、二度と目を覚まさない」
たま「苦しまないで死ねるのなら、そうしてみたくないですか?という誘惑ですよね」
くむ「いろいろ、訴えかけてくるなと思うんですよね。実際、そういう薬が存在します、死ぬ権利もありますと言ったら、どうするのかな。状況によっては…というさ」
たま「切実な人から行っていくかもしれないですね」
くむ「それがOKになりますよ、というのが自殺法なので。物語的にこのあと救いがあるかどうかはともかくとして、この部分だけに関しては救いを求める人がいるかもしれないなという。こういう部分も含めてこの物語はヤバいなと思って見てますね」
今回の特集配信直後のタイミングで第7話「最悪」が放送されたわけですが、なんと、第8話「曲がる世界」が12月30日よりスタートという衝撃の告知が…。 「最悪」を抱えたまま1ヶ月以上待たされる状況に陥った原作未読組のみなさま、なんとか正気を保って年末を迎えられますよう!
(笠井美史乃)