「走るの好きか?」にカケルは応えられるのか そこ☆あに『風が強く吹いている』特集まとめ

地味だけど、確実に支持を集めている今期の“実力派”。今週の特集は『風が強く吹いている』です。原作は三浦しおん著の同名小説(2006年)。漫画、映画、舞台など、これまで様々な形で展開されてきましたが、10年以上経った今年、2クール作品としてアニメが始まりました。とにかく30分の構成が巧みで、1話ごとに少しずつ、でも確実にピースが組み上がっていく様子は、翌週の放送を待ち遠しい気持ちにさせてくれます。

そこあに「風が強く吹いている」 #559
「そこ☆あに」559回目は『風が強く吹いている』特集です。 原作は「舟を編む」の三浦しをんによる2006年に刊行された小説。大半が陸上初心者のメンバー10人が所属する「寛政大学・陸上競技部」で箱根駅伝を目指す物語。漫画・ラジオドラマ・舞台そ...

■物語的には、箱根までは行ける…はず!
くむ「卒業していく4年生もいる、ということは、そこで一つの物語がきちんと終わる。確実に箱根駅伝までは行けるに違いない、とは踏んでいるわけですけど、我々は。ただ、どうやってこのポンコツ集団がそこまで行けるようになるのかを、どう物語にしてくれるのか、というのが非常に楽しみなわけですよね。そこを超えて一気に優勝しちゃったら、それはアニメになっちゃいますよ。アニメだけどさ」
丸井「アニメというか少年漫画的になっちゃう」
小宮「少年漫画だと、例えば10人のスターティングメンバーがいて、それ以外のキャラクターがいて、行けない人は行けない。だからこそ全国大会とか優勝とかが見えてくるけど。(竹青荘は)10人しかいないので入れ替えられないし、9話でも王子はあの状態のわけだから。ここから本当に箱根駅伝で優勝しちゃったら完全にフィクションだし、それはないであろうと思うんですよね。どこまで勝負できるか、というところが見所ではあるかなと」
くむ「そこは駅伝の面白さなのかもしれないね。タスキをつないでいく中でどう物語が繰り広げられていくのか、というのが。結果的に優勝だけではない物語を見せてくれるのかもしれない」
小宮「スポーツものでその競技の面白さを知ることはどの作品でもあるんですけど、なんか駅伝というものの見方が広いなと。そこが三浦さんが小説で描いているところなのかな。周りの人たちの役割まで描いているのが、ちょっと少年漫画とは違う視点の広さを感じました。後援会とかね」
くむ「どこからお金出てきているの? とかをちゃんとやろうとしているわけでしょ。普通だったらあれ、学校が用意していますよね」
小宮「少年漫画だと別に普通に、遠征全然行けます、みたいになっちゃうので」
くむ「お金も要るよね、確かにね、集めなきゃいけないからTシャツ着ましょう、みたいなのとかさ。ああいうのを見ているとリアリティがよりアップしていきますよね」

■伸びしろしかない?! 王子(柏崎茜)の活躍がカギになるか
くむ「もう少し…もう少しなんとかなりそうなキャラクターを、普通だったら持ってくるんじゃないか、という」
丸井「一番、クラスで足の遅そうなタイプじゃないですか」
小宮「むしろ体育を見学・・・みたいな感じですよね。イメージですけど」
くむ「そんな彼をアスリートにしようという、その気持ちですよ」
丸井「逆にそれが面白いというか。やっぱりアニメを見るのは、私もそうですけどオタクの人が多いわけじゃないですか。絶対、あのキャラは共感呼ぶと思うんですよね」
くむ「そこがこの作品の面白さなのかなという気はしますよ。ここに王子のようなキャラクターを入れているところが。他のキャラは鍛えればなんとかなるかもしれない感を漂わせているんだけど、王子だけはね……無理じゃない?という(笑)。実際に走らせてみたら以外といけるじゃん、だったらよかったんですけど。どう考えても今のところ無理ですよね」
丸井「生まれ持った身体能力というのは小学校の時に自分で実感しちゃいますからね。そこから苦手になるとずっと苦手ですよね」
くむ「走り方とかのフォームとかは多分鍛えれば変わると思うんだけど、でも基礎体力が元々ないわけじゃん、どう見ても。それを半年やそこらくらいで、どこまで上げれるのかという部分はあるよね」
丸井「でも、きっと彼が何かを変えてくれるんじゃないかなと思っています。すでにだいぶ変わっているじゃないですか」
くむ「そうですよね。一番あの中で伸びるのは王子に違いないわけですよね。だから、彼の成長がまさにこの物語のキモになるのかなっていう感じがね」

■ハイジも、カケルも、ひとりでは目指せなかった
くむ「やっぱり彼(カケル)は真剣にやっていたわけでしょ、陸上を。だからこそハイジの考え方についていけないところがあるんだよね」
小宮「から回っている感はすごくある。節々に出てくるハイジさんの回想カットから考えるに、カケルとハイジって本当は似ているんだろうなと、ちょっと感じているので」
丸井「カケルはコミュ障というか、心の中で孤独がある。結構主人公らしい主人公、といったらそうなのかな。ハイジさんは、過去がちょろっと見えて来ていますけど、やっぱりあの笑顔が怖くて。声優さんの演技も微妙に抑揚のない感じが怖くて。それがどう崩れて行くのか、すごく楽しみです」
くむ「ハイジにとっては、ある種の執念なわけですよね。大学4年で箱根に出たい、というのがあるから、こんな無理なことをしているわけでしょ。そこにエースを引き入れることができたわけだよね、カケルという。でもカケルからするとこのメンツじゃ出れないよ、なわけだからね」
小宮「でもここが物語の面白いところで、多分カケルがいないと絶対誰も箱根なんて目指さないだろうなと思うんですよ」
くむ「うん、確かに」
小宮「絶対無理じゃんと思うところが、カケルがいるからなんか走り出しちゃったじゃないですか」
くむ「そうなんですよね。ハイジだけじゃダメだったんですよね」
小宮「逆にカケルも、一人じゃ絶対に駅伝にはいかないし。10人もいると言えばそうなんですけど、すごい描き分けられていて、カケルとハイジを中心に補い合ってちゃんと駅伝を目指して解決して行くんだろうなというのはすごく感じるので」

一人ひとりに過去があり、挫折があり、得意なことや苦手なことがある。10人のキャラクターそれぞれをじっくり描き強度のある物語を編み上げていってくれるのは、2クール作品のいいところですね。彼らは、私たちをどこまで連れていってくれるのでしょうか。この先、絶対に期待できる作品だと思いますので、まだ見ていない方はぜひ今のうちに追いつくのがおすすめです!

(笠井美史乃)

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