積み重ねの厚さが描き出す、濃い青春 そこ☆あに『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』特集まとめ

今回は、ただいま劇場公開中『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』特集です。2015年春のテレビシリーズから始まり、そこ☆あにで特集するのはシリーズ通算でなんと6回目。昨年の『リズと青い鳥』も含め、丁寧な積み重ねがあったからこそ、100分という時間の中で何倍もの厚みを見せてくれました。逆に言えば初見には厳しい作品ではあるのですが、それにも関わらずたくさんのコメントをいただきました。ありがとうございました!

※本編トークおよびこの記事にはストーリーのネタバレが含まれます。

そこあに「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」特集 #581
「そこ☆あに」581回目は『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』特集です。 原作は武田綾乃による小説。第1期TVシリーズ2015年4月-6月・第2期2016年10月-12月放送。総集編の劇場版を挟み、2018年4月映画「リズと...

■やっと来た? それとも意外? 恋愛脳ではない二人の恋愛
くむ「あの幼馴染の二人がいい関係を持っているというのは、以前のTVシリーズからすごくよく描かれているなと思っていたわけですよ。片方では麗奈との関係もありながら。だから今回スタートがそこ(久美子と秀一)だったというのは、やっと来た!という感じでしたよ」
那瀬「うーん…付かず離れずで行くかな、って私は思ってた。(恋愛を)やるんだという驚きの方が私はありましたね。なんか小っ恥ずかしくなったの。久美子が!恋してる!(笑)。それに葉月とのこともあったじゃないですか、秀一って。だからこそ、秀一とはずっと付かず離れずで卒業まで行くのかなと思っていたんです。周りの部員にバレてたのかどうなのか、というのは明確にはされなかったけれど、そのあたりもね。隠れて恋愛というのもまた青春ですけど」
くむ「めっちゃ青春してた!」
美樹「でも私は、こんなこと言ったらかわいそうなんですけど、秀一との関係があったことによって、やっぱり久美子と麗奈の関係って特別なんだなという、男と女との違いみたいなのを感じちゃって。最終的に久美子は選ぶわけじゃないですか、ちょっと間をおくという形にしてしまうので。やっぱり戦友じゃないですけど、共に戦うという意味では女同士のつながりというのは切れないものはあるよな、と。麗奈とのつながりの強さみたいなものを、秀一と関係があることによってまた新たに感じたな、という風に思いましたね」
くむ「その対比上、必要だったのかもしれないですけど。でもいい終わり方だったじゃない。というか終わってないわけだからね。あんな綺麗な別れ方ってないでしょ」
美樹「どうせ大丈夫だよ、と思っちゃう(笑)」

■同じ時間軸を2つに分けた、『リズと青い鳥』とのつながり
那瀬「リズはもう、キービジュアルから雰囲気を変えている感じだったし。でも、時系列的には同じ時期で、原作としては第2楽章、全部一緒くたなわけですよね。ただ、文章だから行ったり来たり、みたいなことも表現できるのかな。原作を読んでいないのでどんな形式かは定かではないんですけど」
くむ「キャラクターデザインとかも全く違ったわけじゃない」
那瀬「そうですよね。映像的にも全然違う感じでしたからね。私『リズと青い鳥』特集の時に、靴下で20分語れるとかアホなことを言った気がするんですけど(笑)。(今回は)靴下とか、足元描写がほとんどなかったと思いません? だから本当にスポットを当てる場所からして違うんだな、というのが。徹底的にこだわって分けているんだなと思いましたね」
くむ「あとは、(リズでは)とにかく男性にスポットが当たらないというね。先生以外はほぼボケて顔があまりわからない描写になっていて、こんなに女生徒しかいなかったっけ?みたいなところとか。あれはもう美学ですよね。そこから今回は完全にテレビシリーズの延長に戻った。ただ、もちろんリズに出ていたキャラクターもこの中にいるわけですよ」
那瀬「いるのに。ここも徹底しているなと思いましたけど、声は一切出ていなかったんですね」
くむ「あの二人ですね」
那瀬「希美とみぞれですよね。でも、不思議と聞こえていた感じすらしちゃうというか。存在感がちゃんとあって。セリフがなかったことにちょっとびっくりしました」
くむ「逆に、リズではモブだった子が、こっちではメインだったりするわけじゃない。久美子なんて、いるのはわかっているけど『リズ』ではほぼ前に出てきませんもんね。作品の中で人が生きているというのはこういうことなのかと、まざまざと見せられた感じがします」

■新入生・久石奏、2年生になった久美子との関係は
くむ「誇張されている感じはあるんだけれど、みんなに合わせて嫌われないように行動する子っていっぱいいると思うんですよ。それを極端なキャラクターにしたのが奏なんじゃないかな。だから、常にレーダー張っているわけでしょ、周りの関係、この場の力関係ってどうなっているの、みたいなさ。その中で自分が嫌われない立ち位置を一生懸命考えて行動している。で、このグループの中では久美子に取り入るのが一番いいに違いないというさ。そういう行動をとっている子だと思うんだけど。いるんじゃない、意外と」
那瀬「高校生でそんなことまで考えられるってすごいなと言いたくなるけど、まあ本人としては…」
くむ「必死ですよね。彼女が何でそうなったかというところまで描かれたから、視聴者側的には嫌わずに済んでいる感はありますよね。でも、わかるけれども好きになれない、みたいなね。いい落とし所だったのかな」
美樹「奏をあんまり憎めないなと思ったのは、結構久美子と似ている部分があるからかな、と。テレビシリーズでずっと見てきたからこそ、久美子も空気を読んで客観視してたよね、みたいな。だからそういうところを一歩超えた久美子が先輩にいて、奏もそういう部分はあるけど、まだまだ変われるだろう、まだ1年生だからな、っていう感じがして。可愛いなって見れましたね」
那瀬「メタな言い方だけど、久美子は主人公だからこそ周りにいいキャラクターが配置されていて、ラッキーなところもすごくある。久美子だって、すげえムカつくやつかもしれないと思うのよ」
美樹「麗奈に性格悪いって言われてたから」
那瀬「ホントそうなのよ。麗奈は麗奈で確立されたものがあるけど、久美子も奏も同じくらい性格悪いっちゃ悪いと思うんだよね。だからこの二人が、なるべくして後輩先輩の関係になったみたいな。見事な組み合わせを持ってきたなという感じはするよね」

劇場映画という限られた尺の中で、原作からこぼれたエピソードがたくさんあることは事実ですが、それでも1本の映画として、また2本でひとつの時間を描いた物語として、非常に奥行きのある経験を届けてくれた作品だったのではないでしょうか。そして、トドメは最後の1シーン。ここまでやって続きがない、なんてことはありませんよね!

■そこ☆あに過去の「響け!ユーフォニアム」特集
https://sokoani.com/archives/9261.html

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(笠井美史乃)

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