かつて様々に思い描いた未来が、現実にやってきてしまいました。今週の特集は2019年の東京を舞台にした映画『AKIRA』です。1988年に公開され、その影響は今のクリエイターたちの作品にも現れるほど、強い衝撃を与えた作品でした。トークでは作品の話はもちろん、メディアの昔話なども盛り上がっています。
■今見るからこそ感じる、あの頃の「全力」
蒔田「『レディ・プレイヤー1』やCMなんかで金田のバイクを見かけたりしていたので、あまり見ていないという印象はなかったんですけど、よく考えたら小学校高学年の頃に見て以来でした。改めて見たらこんなに作画がすごかったんだという、当時のエネルギーみたいなものを感じてちょっとびっくりしました。当時よりも衝撃は大きかったですね」
たま「多分、手描きでできる最高峰なんじゃないですかね。今となってはもうできない類のことだと思うんですよ、こんな枚数かけて作るというのは」
蒔田「デザインにしろ、細かさにしろ、動きの丁寧さにしろ、ここまでやる必要ないでしょ、って。無駄な描き込みに思えそうなところまで全力でやっていて。力任せ感というか、体当たり感というか、どこまでやれるのか自分の体がぶっ壊れるまで試しているみたいな。そういう勢いは一番見て感じ取れるんじゃないかなって思いました」
たま「今の目で見れば未来的ではないんですけど、確かにこの作品にみんな“未来”を見たんですよね、あの頃。というのがすごくわかるんですよ」
くむ「退廃的な未来ではありますけどね」
蒔田「アニメーションという表現の未来、みたいなものも見ていた感じがする」
たま「いまだに、この作品から影響受けたんだろうという表現とか、アイテム、モチーフ、いっぱい見かけます」
蒔田「そうだよね」
たま「それだけ印象に残ったものなんだろうな、と言えるから。本当にすごい作品なんだなと、久しぶりに見て思いましたね」
■今じゃ作れない、昭和が思い描いた未来
くむ「いろんな意味で時代を感じる作品ではありますけど。古くないよね、というのとはやっぱりちょっと違うと思うんだよね」
蒔田「古い部分はもちろんあるんですけど、負けていないよね、というのはありますよね。敗北はしていないんだよなっていう」
くむ「逆に、これは今作れないじゃん、というスゴさはありますよね」
たま「あの頃、未来に見た夢みたいなもののエネルギーというのは、今未来に対していろんなこと考えるよりも、きっとエネルギーがあったに違いないと思う。すごい純粋ですよ」
くむ「ここで描かれている2019年は、どちらかといったら80年代というか、70年代くらいのイメージの未来ではありますよね。やはりデジタル機器とかがあまりにも古いよね、っていう感じは、未来ものを描くときのつらさだよね」
たま「ショッピングモールの看板とか、すごく懐かしい感じですよね。今、ああいうもの探そうと思ったら中野ブロードウェイとか、そういうところじゃないと見られない」
くむ「昭和感がすごいというのはありあますよね」
たま「昭和感のある未来、というジャンルじゃないですか」
蒔田「もう異世界だよね」
■30年前の作品、今初めて見た人の感想は?
小宮「私は、正直気持ち悪かったです。毛色は違うかもしれませんけど、子供の時に見た『ルパン三世』のマモーとか『笑ゥせぇるすまん』を見たときのような。なんかわからないけどスゴい、みたいな。そんなふうに感じたのをすごい思い出しました」
たま「トラウマ系作品ですよね」
小宮「ピカソを見たような感じです。ピカソの絵ってすごくいいとは思わないけど、なんかすごい革新的、みたいに感じるじゃないですか。そういう感覚に近いなって考えてました。作画がすごいというのもそうだし。ストーリを追えてはいるんですけど、結局最後まで見て、原作も読んでいないので、わかったようなわからないような…みたいな感じで終わっちゃったんですね。でも、スゴいというのは思ったんですよ」
丸井「とにかくホラーでした。半分くらい目をつぶってました。おばあちゃんみたいなおじいちゃんみたいな子供が、子役の声で棒読みで喋っているのがとにかく不気味で。ぬいぐるみのシーンなんかはもう泣いてました」
小宮「怖すぎて?」
丸井「怖すぎて! でも鉄雄はカッコよかったです」
蒔田「かっこいいのか、あれが?」
丸井「全体的に、なんか噛ませ役っぽい感じが…」
蒔田「噛ませ役はカッコよくないんじゃ……」
丸井「あんな感じの男の人は好きです。あとは、岩田光央さんと佐々木望さんがまだ新人だった頃だから。ああ、こんな演技されていたんだ、というのも思いました」
蒔田「声優さんでいうなら、二又さんとか塩谷さんがこんなところにいる!みたいなのもありました」
くむ「普通にモブ役でいましたよ」
蒔田「そういう意味では、思わぬところに引っかかっるのも面白かったですけどね。でも小宮さんも丸井さんも、なんだかよくわからないけどスゴいという、絵だけじゃなくストーリからもそういう印象を受けるというのは、間違っていないと思うんですよ」
奇しくも「東京オリンピックを翌年に控えた2019年」が現実のものになってしまった今年。30年間の歴史と、30年前のエネルギーを感じてみるのもいいかもしれません。原作未読の方もこの機会にぜひ!
【監修・大友克洋】AKIRAと共に東京大改造を追う『東京リボーン』OP映像【NHKスペシャル】
(笠井美史乃)