今週は現在劇場公開中『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1罪と罰』特集です。テレビシリーズ2期で登場し、優秀という設定ながらあまり活躍のなかった監視官・霜月美佳が主人公。今回はしっかり主役を張っています。時間が経っても古くならず、ますます新しい魅力を見せてれる作品世界の厚さ・強さを感じさせる新作です。
■テレビシリーズ第1期、思えば2012年の作品でした
那瀬「今回初めて見た丸井さん的にはどうだった? 6年7年前のアニメなわけだけど、古いものだという感覚はなかった?」
丸井「むしろ2012年が6〜7年前なのか、という驚きの方が大きかったです。結構最近な気がしたんですけど。一気見しても、全然6〜7年前の作品には感じないですし。未来の話だからというのもあるかもしれないんですけど、すごい受け入れやすかったです」
那瀬「確かに、受け入れやすいというのはわかるな。VRとかがどんどん進化してきたからこそ、生々しく感じる部分もあるというか」
丸井「そうですね。最終的に勧善懲悪じゃないところも面白いなと思って。禾生(かせい)局長なんかも、悪役だったのかと思いきや結局ずっといたりとか」
那瀬「悪ではないんだよね」
丸井「そうなんですよね。なんかそこが面白いなって思いました」
那瀬「それぞれの正義というか。局長の言わんとすることも間違っているとも言い切れない感じとかがね」
くむ「そこがこの作品の面白さなんだと思うんですけどね。でも、あくまでもあの時はSF的な絵空事だった物語が、最近の中国のスコアシステムみたいなものを見ていると、現実化しつつある…みたいなね」
那瀬「うーん…」
丸井「怖い…」
■作品の中でちゃんと時間が流れていることを感じる
那瀬「もうね、1期とかを見ていると、あっ宜野座さんすごい頼りになる!どうしたの?! みたいな(笑)」
くむ「宜野座は美味しいキャラクターじゃないですか、ずっと」
那瀬「まあね。立場が美味しいよね」
丸井「イケメンだし」
くむ「常に狡噛さんのことを思っているアイツですよ」
丸井「1期ではすごい嫌味なクールキャラだったのが、今回の劇場版ではすごい優しいお父さんみたいな感じになってました」
那瀬「お父さんまでいっちゃうか!」
くむ「年齢32だからね、もう」
丸井「おじさんて言われてましたけど」
那瀬「美佳ちゃんからすればね、それはそうだよね」
くむ「でも、イメージ的に本当のお父さんの真似というか、全然届かないけれどもそうなれたらいいなという部分が、彼の中にもあるはずですからね」
那瀬「私は今回、弥生さんもすごく好きでした。ていうか、美佳ちゃんがみんなにとって支えてあげたい存在になっている、みたいな描き方もすごく素敵だった」
くむ「結局、物語として我々が見てるものは、1期・2期・劇場版と、今回の3部作の1本でしかないわけだけど。でもその間にもちゃんと物語が存在しているんだと。その結果、各メンバーのコミュニケーションはきちんと取られているからこその、この関係が築かれているんだというのが、わかるような物語でしたね」
■さらに先へ… 未来の物語を創るためのパーツとして
くむ「(パンフレットの)ストーリ原案・監督の塩谷さんのインタビューの中に『この3本はこれから先の未来の物語を作るために必要な要素、ハメておきたいパーツとして考えました』という一言があって。この3本で終わりではない。先を見越した物語、なんですよね」
たま「2期だけだと霜月がシビュラに対してどういう気持ちを持っていたのかわかりづらかったというか。真実を知って素晴らしいですと言ったところまでしか、私の中で認識がなかったんですけど。今回の映画で、シビュラシステムは必要なもので、今後も存続していってほしい、ただ間違った運用はしてほしくないというスタンスだとわかったので。これって常守朱とは真逆の考え方じゃないですか。いつかなくなるべきもの、という考え方をしているから、彼女は」
那瀬「そうですね」
たま「もしかしたらいつか、霜月ちゃんと常守さんは致命的に対立することになるんじゃないかと思いもしたし、そのときに霜月は、ちょっと超人になりつつある常守に引けを取らない人種になっていなくちゃいけないから。そういう意味で今回の成長はすごく必要な要素だったかなと思いました」
那瀬「個人的には私、今回の美佳ちゃんの姿勢はすごい共感するものがあって」
たま「ああ、わかります。すごい理解できる考え方だった、あれは」
那瀬「私たちが投票権をもって政治家を選ぶ権利があるのと似た感覚というか。シビュラ、あなたがやるのならちゃんと私が認めるシビュラでありなさいよ、バコン!みたいな感じに私は見えたから。だから、シビュラがなくなるべきものなのか、というのはますます今回揺らいだ気がしましたね」
1時間という尺が惜しく思える面はあるものの、ファンの望む新作としても、シリーズを構成する1本としても、役割はしっかり果たしているのではないでしょうか。3部作が3ヶ月連続公開というスピード感もいいですね。間もなく公開される2作目にも期待したいと思います!
(笠井美史乃)