ポストジブりがここにあった?! 人に勧めたい湯浅ワールド そこ☆あに『夜明け告げるルーのうた』特集まとめ

今週のそこ☆あには、『夜は短かし歩けよ乙女』に続いての湯浅監督作品、『夜明け告げるルーのうた』特集です。湯浅監督ファンはもちろん、老若男女全ての人に見て欲しい、ストレートに楽しくてキャッチーで心に残る青春映画でした。ポストジブりはこっちなのかも? 予告編を見て分かった気になっているとしたら、それはもったいないです!

なお、本編中にはネタバレを含むトークがあります。これから観に行かれる方でネタバレが気になる場合は、14分までで一旦止めてくださいね♪
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■誰にでも楽しめるってスゴイこと
那瀬「湯浅監督って、アートとかドラッギーという言い方もされるように、確かに感覚で見せてくる、まさに絵描き出身の監督さんという感じだったんですけど。それが今回、エンターテイメント色が非常に強い。年齢幅も広く誰にでも受け入れられる作品だなというのが、今までいろんな湯浅作品を見てきた私にも衝撃的でした」
くむ「まさに、ジブリを観に行くような人たちが完全にターゲットだなと思って観ていました」
那瀬「確かに、ジブリ映画って、見終わった後に凄かったとか、良かったとか、すごく簡単な感想を持ちますけど、それって大事じゃないですか。理屈抜きで、楽しかった、面白かった、が残るというのは、大衆向けということなのかなと、改めて思うというか」
くむ「夏休み映画として公開して欲しかった。小学生、親子でも見てほしいし、恋人でも見てほしいし、仕事に疲れきったサラリーマンにも見てほしいし、おじいちゃんおばあちゃんにも見てほしい、そんな映画になっているんですよね」
美樹「この映画が合わない人間、この世にいないと思います(笑)。誰にでも響くはずと思いますね」

■ルーとカイ、真逆の組み合わせ
那瀬「ルーは魚っぽさと子供っぽさがありながら、人間とは違うヤツなんだという感じもあって。全部を併せ持ってるのが不思議」
くむ「しかもそれで少女っぽさもあって、ちゃんと恋をする女の子でもある」
美樹「触ってみたいですよね、見た目的にも。質感が映像から伝わってくるのが面白いです」
那瀬「そうなんですよね、動きの魚っぽさもそうですけど、子供っぽさというのも。電車を手で這わせるとか、すごい子供っぽいなと思うところ。ああいうのは観察力があるなと思いますねえ」
くむ「複雑なキャラクター付けがそのまま生きている感じの子ですよね」
那瀬「ルーがすごくいろんな要素を合わせ持っているのに対して、カイがめちゃくちゃ普通じゃないですか」
くむ「そうですね、主人公らしくないといえばらしくないし。ここ最近、いじいじするタイプの主人公って減っているじゃない?」
那瀬「典型的にはシンジくんですけど、でもそれとも違う。むしろ、今時の若い子ってこんな感じなのかな。いろんなこと考えていてもあんまり口には出さない子、というイメージがありますね」
くむ「そうかもしれないですね、意外とうまく渡っている感じ。昔だったらいちいちぶつかったりしていた部分が、今はぶつかるのすら面倒臭い。うまくやっているように見えているけど、そこには断絶の壁が実はあるんだよ、みたいな」

■いろんな親子の物語
美樹「いろんなお父さんと子供という関係がいっぱいあるじゃないですか。家庭ごとに愛情の示し方ってぜんぜん違って。遊歩のお父さんはあまりの愛情に、作品の中では困る感じになっていたり。他にもいろんな愛の形があって」
くむ「遊歩の爺さんも、最初はナニモンだこいつ?感ありますよね。絶対悪役だと思ってたら違う」
美樹「でもどんな形でも、みんな親が子供を思う愛なんだなというのが分かるのがすごくいいですね」
くむ「確かにねえ。。。愛のこじらせ方ですよね」
美樹「そうなんですよ!難しいですね、親って」
くむ「気持ちは私も親だからわかりますけど。これが愛だ、とはなかなか言えない感はあるかなという気はしますね」
那瀬「確かにこじらせ行動は多いんですけど、憎めないのはみんな愛だからですね」

いい物語でした。まさか最後に(しかも爺さんに)あんなに泣かされるとは……。想像以上の勢いと繊細さとちょっとした毒を混ぜつつ、幅広い人が楽しめる湯浅ワールド。そこあにスタッフみんなが口を揃えて絶賛する珍しい作品となりました。動きもすごいし音楽もとても素敵なので、劇場での鑑賞がおすすめですよ! 面白かった方は小説版もぜひ!

(笠井美史乃)

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