今週は、ただいま劇場公開中『映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説』特集です。テレビシリーズの人気からついに銀幕へ、そして4DXへ! テレビシリーズも楽しかったですが、劇場は劇場なりの楽しさをどっぷり体感できる内容になっています。
今回は脚本家の上江洲誠さん、KADOKAWA小倉理絵プロデューサーをお迎えし、テレビシリーズスタート時点からの面白いお話をたっぷりうかがいました。『このすば』ファンなら聞かなきゃもったいないですよ!
https://sokoani.com/archives/13221.html
トークには劇場版のネタバレが含まれますので、まだご覧になっていない方はご注意ください。
■金崎監督と脚本・上江洲さんの相思相愛!
那瀬「最初に原作を読んだ時は、どんな感想でした?」
上江洲「最初に依頼された時は、僕もおじさんになって、ちょっとライトノベルを読むのがしんどいなと思い始めた頃だったんですよ。で、断るつもりだったんですけど、断るにしても必ず原作を読みますので、読んだ上で断ろうと思っていたら、その日のうちに2冊読んじゃって。おじさんが読んでもすごく面白くて、内容もJRPGを題材にしているので、逆に昔からのJRPGに詳しい作家じゃないとうまくアニメ化できないぞと思って。という意味では、なるほど僕に依頼されたのはよくわかる、確かに僕向きであると。で、どうしようかなと思ったんですけど、実際断るつもりだったものが、原作がとても面白かったので、金崎監督がやるんだったらお受けしますよという条件で返事の電話をしました」
那瀬「じゃあ、金崎監督でというのは上江洲さんの指名みたいな感じだったんですか?」
小倉「それが、実は、相思相愛で…」
那瀬「えーーー!」
小倉「スタジオディーンさんから金崎監督にオファーをした時に、金崎監督からのお返事も、上江洲さんとだったら、と」
中川「奇跡みたい!」
上江洲「長くやっているといいこともあるなと。奇跡でしたね。金崎監督とは以前に『これはゾンビですか?』という原作のアニメを作ったことがあって。お互いの手の内というか、ホームコメディが上手なんだな、向いているんだなというのがよくわかっていたので。色々考えて、このタイトルを決められた期間でアニメにするなら金崎監督しかないなと思ったんです」
■絶対ハーレムにならない関係性、その秘密は?
那瀬「『このすば』の女の子たちって、男性から見て可愛いんですか…?ってちょっと聞いてみたいんですけど(笑)」
上江洲「もちろん。でも、僕も金崎さんもお父さんの年齢なので、娘だと思って付き合っているんです、キャラクターとの距離感が。恋人とかお友達になりたいではなくて。例えば家族だったら、喧嘩したり問題があったりしても突っぱねることはできないじゃないですか。そういう距離感だから、アクア・めぐみん・ダクネスが何か困ったことになったりゴネたことを言ってきたとしても、突っぱねることはできなくて。娘と父親として距離を維持して作品を作っていますね」
小倉「そうですね」
上江洲「この感じが独特の面白さになった、というか。ここが最初にして最大の秘密だと思う」
小倉「最初に金崎監督が“ファミリー感”で行く、と。“ラブコメっっ”とかではなく、カズマを中心とした4人のファミリー感みたいなものを大切にしようとおっしゃっていましたよね」
上江洲「ここがブレていないのがうまく行っている理由だと思います。僕もそれは大賛成で、最初に言いましたけど、そもそも、美少女モノとかに対して、センサーが鈍ってきたというか、興奮しなくなってきているので…」
小倉「(爆笑)言い方…!」
上江洲「もう我々、お父さん目線でアニメを作っているので。カズマも、アレですね、可愛い長男坊ですよ。お父さんの気持ちがわかる長男。お父さんは長男とだけは会話できてるんです(笑)」
■カタルシスへ導く、映画ならではの仕掛け
小倉「今回は最初から“カズマのモテ期”と、“めぐみん・ゆんゆんの関係性”という二つの軸があって、冒頭からそのシーンはいっぱい散りばめられていたんです。それがどう波及しているかというと、実はBGMの中にも隠れているんですよ。めぐみんとゆんゆんの関係性を表す曲を今回新しく甲田雅人さんが作曲されていて、最後の方で鳴らしているんです。ただ、そのフレーズを前半や中盤でも関連するシーンに散りばめてあって。なので、最初から最後まで見たときに、耳で聞いても納得感があるというか。すごく計算されているんです」
上江洲「そこが一番映画らしいところですよ。テレビとの違いはそこですよね。90分かけて、映像ができてから音楽作っていますから、ちゃんと画面と音楽が同期しているんです。そこには金崎さんの意図もあるし、音楽を作る甲田さんの意図も入っているので。僕はオーケストラ収録に立ち会ったんですけど、映画作ってるなぁと思って、感動しましたね」
那瀬「音楽って、1回目はわからなくても繰り返して見た時に、このフレーズここでも流れてたの?というのがいいんですよね」
米林「ありますあります」
上江洲「ダクネスとかめぐみんの音楽が、違う個所に隠れていたりもするんです。映画ってどうしても尺が限られるので、セリフで語られていないところでも音楽で人物に触れていることで、90分見た時にお客さんの中でそのキャラクターと長い時間付き合ってきたななという感覚を生み出すことができるんですね。サブリミナルという言葉が正しいかどうかわかりませんけど、音楽というのはそういう目に見えない部分、文字に書かれていない部分に訴えかけるものなので。本当にそこは映画を作っていてよかったなと思うところですね」
『このすば』の面白さとは何かと聞かれたら、コメディそのもの笑い、ノリの良さ、何となく漂う温かさ…うまく説明しきれませんが、なぜこういう形で生まれてきたのかがトークからたくさん伝わってきました。きっともう一度、劇場へ足を運びたくなると思います。応援上映も企画されているようなので楽しみですね!
(笠井美史乃)