最終回特集では語りきれない、ということで単独で行きます! 今回は『昭和元禄落語心中 -助六再び篇-』特集です。原作が面白いのはもちろんですが、アニメがその魅力を最大化して、落語を知らない層もガンガン引きつけてくれる作品でした。静かで深くて強烈な感動を、共有していただければと思います。コメントをくださった皆様、ありがとうございました!
■オープニングから最終話まで
小宮「小夏と与太郎が振り返るのに対して、八雲さんだけ前から後ろに行ってしまう。八雲さんの心中したい気持ちがずっと、おなかいっぱいなくらい描かれていて、オープニングひとつですごく思うところがありますよね」
那瀬「八雲から見えている世界が悲しすぎるというか」
くむ「だから、どこまで描くのかなというのがあったんですよ。死に至る何を描くのか、と。最終話を終えてみると、現代まで描いたところにこの作品の素晴らしさというか、代々受け継いでいく大事さみたいなものを最後まで描いてくれたなと。あの12話があるだけでぜんぜん違うよね」
那瀬「そうですね、もちろん八雲の人生を描いてはいるんですけど、落語そのものの世界を描いてくれたことで、きちんとこちらが消化できるというか」
くむ「未来を見せてくれるいい最終話だったなという感じがしましたね」
■一番ヤバいと思った落語は?
くむ「第3話の『居残り』。与太郎が親子会をしたいという話で、手本を見せてくれるわけですよ。最初のパチン、のところから演出的にもすごく引き込まれるスタートなんですよね。八雲の得意な演目ではないけれども、まるで助六が乗り移ったように演じるという。もう、怪演と呼んでいいんじゃないかというくらいのすごさを感じましたね」
那瀬「私は与太郎がやった『死神』ですね、最終話の。それこそ八雲が乗り移るじゃないですけど。2期ってやっぱり与太郎と八雲の物語だったなと感じるんです。師弟ってすごいですよね。与太郎も言っていましたけど、同じ道を後ろから歩いている。その絆の深さにぐっときてしまって。だって、与太郎に『死神』なんて合わないだろうと思うじゃないですか」
くむ「今まで八雲師匠の『死神』を何度も見ているからこそ、同じ演目でこんなにモノが違うんだって味わわせてせてくれるじゃない」
那瀬「だから夢オチであることすら怖くなるというか。落語を見続ける楽しみはこういうところにもあるんじゃないかと思います」
くむ「作品の中で、同じ演目を何度も、しかも一人だけじゃなく複数人がやることで、結果的にこういう効果を生み出してくるわけですよね」
■1期も凄かったけど、歳を取ってからの八雲師匠って……
くむ「最後の方は本当に死ぬ寸前とわかる声じゃない。しかも、台詞として話す老齢の声と、その声のまま落語をやるという難しさ!」
小宮「私が一番印象に残っているのは、雨竹亭でやっていた『死神』なんですよ。あれを、実際に八雲さんが生きているわけじゃなくて現代に生きている声優さんがやっていると考えると恐ろしいし、全然そう感じない。11話でも、八雲さんが若くなって出てきて、また年老いて出てきたじゃないですか。どれが本当の声かわからなくなるくらい」
くむ「これぞプロっていうね。でも何のプロなんだ? これ、声優という言葉で言い表していいのか?っていう」
小宮「石田彰さんが途中から落語家さんじゃないかなと思いはじめました」
くむ「もう“八雲”という人物に見えるというね。石田さんてけっこう怖い役やることがあるじゃないですか。でもここまで怖いのは初めて見ましたね。まさに、八雲が実は死神なんじゃないかっていうくらい」
ものすごいパワーとクォリティに毎回圧倒される幸福……。1期・2期を通して、人生の中で何度かある忘れられない作品との出会いになりました。もし見逃しているなら、生きているうちにぜひ一度。絶対に見ておいた方がいいですよ!
(笠井美史乃)