今週は、そこ☆あに的に突然ブームがきた『胡蝶綺 〜若き信長〜』特集です。歴史創作で幾度となく描かれてきた織田信長ですが、この作品の解釈はまた新鮮。さらに、信長の正室とされながら詳しい記録がほとんどない、美濃の大名 斎藤道三の娘・帰蝶(濃姫・胡蝶などとも)が、キーパーソンの一人としてそこ☆あにスタッフの心を掴んだようです。
■戦国大名として名を成す前の、信長の新しい一面
くむ「見せたいところが政治ではないよね」
美樹「そうなんですよ。織田信長ってもっと戦をしてるイメージなのに、ほぼ戦わないじゃないですか」
小宮「戦いたくない人な感じですよね。今のところは」
くむ「頭が切れるというのは子供の頃から描かれていましたし、力というよりも知的な感じを描いている気がしますね」
美樹「私、この作品の信長が一番好きな気がします。信長って本当にうつけ者とか言われていたわけじゃないですか。だけど、それをどう解釈するのかというところで。戦国の世では存在が浮いてしまうほどの思想を持っていたからとか、そういう描き方がすごい素敵だなと思いますね」
小宮「歴史の勉強で知っている信長って、いわゆる戦国時武将というイメージだったけど、この作品ではここから時代は平和に向かっていくという感じでキャラクター性を作っているじゃない。そこがちょっと新しいなとは思ったね」
くむ「生まれる時代を間違ったよね、信長は。もう少し先だったら、彼の才能をもっと活かせる時代が来たのかな、と。まあ、少なくとも魔王ではないよね、ここに出てくるのは。ただ、オープニングを見る限りは彼が魔王と呼ばれる時代が来るのかもしれないけれど。たくさんの裏切りの上で」
美樹「そうなんですよね。いろんなすれ違いとか裏切りを知って、いろんなことに絶望してああなったのかな、みたいな。今まで持っていた信長のイメージにつながる、ベースみたいなところを見せてもらっている感じがして。信長の新しい一面を知った気分になれるのが面白いです」
■本当にそうだったかも? 史実の穴を使った意外な設定
美樹「私、この信長と帰蝶に、キリトとアスナを感じるんですよ…だから理想のカップルなんですよ。強い信長に寄り添えるのは、守られる女じゃなくて、背中を預けられる女だなと思うと、帰蝶がぴったりだし、アスナを感じる…もう、最高のカップルってことを言いたい!」
くむ「まさにね。エンディングの一番最後のシーンに出てきますからね」
米林「早くあのシーン見たいんですよね」
くむ「この二人がすごく魅力的だったから、私はこの作品にハマったと言っていいですね。まあ若干BL感が…若干じゃないですね、BLですね、言ってしまえば」
美樹「そうなんです…こんだけ話してますけど、男、なわけですよね、帰蝶は」
くむ「だからこその、この作品の面白さなんですよね。斎藤道三の娘として政略結婚で信長の元に嫁入りしてくるわけですが。ところが、実は男性でくノ一だった、超美人の、という」
美樹「設定盛りすぎですよね(笑)」
小宮「濃姫という名前のイメージから『姫』ってつくと女性だと思っちゃうから、帰蝶という名前で出てきたのはすごく良かったなと思います」
くむ「作品の冒頭で、帰蝶の目から信長のことが語られるという形でナレーションが入りますから、帰蝶は最後まで信長を見守ったのかなという感じはありますけれども。それが帰蝶としてだったのかどうかは、なんとも言えないですよね。私も知らなかったんだけども、実際、彼女がどう生きたのかはほとんど史実に残ってないというのを聞いて、驚いたくらいですから。今まで描かれたものも、あくまでも物語だったんだというね」
美樹「意外ですよね。でもそれだけ分からないことがあるからこそ、こういうふうに想像できるという面白さもあるなと思いますね」
■時代が変わっても技術が進んでも、伝え切れない思い
小宮「この作品て、愛とすれ違い、交流みたいなところを描いているじゃないですか。そこはやっぱり、今の時代と少し似ている部分も感じたりするんですよね。手紙を届けられなくてすれ違ってしまったことも、今だと通話をしなかったせいで文章だけで伝えようとしてすれ違うこともあって。この時代だからこそということもあるんですけど、今も昔も変わらないんだなと思って」
美樹「私は、通信手段とか移動手段は、人の思いをできるだけそのまま伝えることができる技術なんだと思っていて。だから、信長と信勝がLINEできたらこんなことにならなかったかも…と思ってたけど、そんなこともないかもしれないね」
小宮「そうかもしれない」
美樹「確かに、連絡手段がこれだけ進歩したって伝わらないこともあるし」
小宮「進歩したからこそ、その手段を取ろうとしない。有り難みが半減しているのかもしれないね、遠くの人と話せるという」
くむ「なんだかんだ言って、信勝も連絡を取りたい気持ちはありながらも、周りの言葉に流されたのも事実なんだよね」
小宮「そんな中で意を決して手紙を渡したのに、秀孝が…っていうのが切なかったですね」
一見すると女性向けのビジュアルですが、なかなかに見応えあるドラマと人間描写は男女問わず楽しめます。この回の収録後に放送された第10話では、いよいよ残酷な史実と向き合うことに…。比較的史実の流れに沿った上でうまい展開を見せてくれるので、日本史が得意でない方も歴史に興味を持つきっかけになるかもしれませんよ。
(笠井美史乃)