9月25日の特集は『聲の形』です。公開から時間をおかずに特集となりましたが、今回もたくさんのコメントをいただき、ありがとうございました。簡単には語りつくせない内容だけに、コメントの内容もスタッフの反応も様々でした。個人的な経験から生まれる思いは共有できないところも、そりゃあありますよね。でも、いろいろと形はあれど人の心に深く響く作品であったことは共有できる部分ではないでしょうか。
■どれくらいキツいのか……不安でした
那瀬「総じると、良かった、ですよ。ただ、記憶を絡めた感想がかなり大きいな、という感触を受けましたね。しかも、話し合ったところで解り合えるものでもないし。だからこの作品の感想を話すというのは、胸が苦しいですね」
くむ「本当に、子供の頃から今までどういう生き方をしてきたかによって、受け方は様々だと思うんですよね。最初はもっと心を悪いほうにえぐってくるかと思いましたが、そうではなかったということで、結果、話せるかなと思いました。でも人によっては別の意味で刺さることはあるだろうということで……ここばっかりはね」
美樹「いじめが良くないこととは分かっていますけど、いま時間が経ったからああいう経験もあって成長してきたのかなと納得できる部分もあるので。誰しもが通る道ではあるのかなと思いますね」
■友達、恋愛、でもその前に、自分
くむ「ちゃんと恋の物語でしたよね、最終的には。ディスコミュニケーションの話ではあるんですけど、最終的には石田と西宮の二人の恋の話に。そこに上野の三角関係、というか」
美樹「(石田も)もちろん好きなんでしょうけど、自分が好きになる資格があるのかと考えていそうですよね」
岩本「恋とか愛の前に、友達ってなんだろう、みたいなところがすごく重いテーマ。彼の主観で見る以上、そこが軸になっているので。まだ彼がその段階まで行っていないと思うんですよね。恋したい、愛したいみたいなところまで行ってない」
美樹「人を好きになれるほど自分を好きじゃないと思うんですよね、彼は。まず自分のことを好きになることから始めないと成長できない。でも最終的には、ある程度の自分を好きになれるところまで来れたのかな、という感じがします」
■男性キャラに比べて女性キャラの生々しさといったら
那瀬「西宮は……私の感想で言いますけど、被害者ぶるのが上手いじゃないですか。彼女なりの人生経験を積み重ねた上で、ああいう立ち回りってやつを身につけて来たんだろうと思うけど。私はあまり西宮を助けてあげられる性格ではないなと思って見ていた側なので」
美樹「でも、上野にも助けられたと思いますよ、結果的に。自分の障害もあったと思いますけど、常に一歩引いて人と関わっているから、上野は彼女が嫌いなんだろうし、だからこそ上野みたいな、真っ向からぶつかっていく人間と出会うべくして出会ったんだろうなという感じがしますね」
那瀬「そうだね、私が上野を支持してしまうのはそういうところなんだろうな。観覧車のシーンがすごく好きなんです。あれを、上野は会話をしようとしたと、私は受け止めているんだけど」
岩本「上野が一番、西宮を普通に一対一の女子として相手しているなという感はあったし」
那瀬「ほんと、言い方が難しいけど、上野はある意味で西宮をを可哀想な子扱いをぜんぜんしていなかったというか」
美樹「だから正々堂々としてくれない西宮が嫌だったんですね」
個性的というかリアルというか、どこか自分の記憶に触れるキャラクターたちの話がやはり盛り上がりましたね。作品全体を見た時に、一つひとつの絵の演技力、自然だけど意図のある音や演出などが一体になって、キャラクターの存在感を後押ししているようです。若く鮮烈な原作に、逃げず誤魔化さず、真摯に取り組まれた姿勢が感じられて、またひとつ、2016年の記憶に残る映画となりました。
映画「聲の形」公式サイト
http://koenokatachi-movie.com