今週は今期新番組から1本目『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』特集です。いかにも…なラノベ原作タイトルの作品を、しかも今期最初に特集するのはそこ☆あに的に意外な路線? でも、今の時代の中でこそ人を惹きつける力を、確かに感じる作品です。
■10年経っても語られる作品かもしれない
くむ「私の最初の印象は、涼宮ハルヒの再来でしたね」
美樹「何となく既視感のある作品という感じがして。でもそれが同じようなということじゃなく、自分の心に引っかかる既視感というか。気持ちがいい、これは絶対に面白いやつだなという引っ掛け方だったなと思います」
くむ「パクリとかオマージュとかじゃなくて、延々続くラノベの世界で、ハルヒの時代から10年以上経っているわけじゃない。そういう時を経た今の青春物語として現れた作品。でも、昔のジュブナイル小説からあるようなSF的要素とか、学園もの、ラブコメ的なものの根底にあるものがきちんと入っているからこその面白さ、というのが、私の中でのハルヒの再来だったのかな。キーワード的にも、バニーガールもそうですけど、色々入ってはいますよね」
美樹「そうですね。ループだったり」
くむ「でも、じゃあこれがハルヒなのかと言われたらそれはもちろん違うとは思いますし。ハルヒにも見えたし『とらドラ!』にも見えたし、その時その時の人気の学園モノの要素を全部持っている作品だなと」
美樹「10年経っても、ハルヒの再来と思ってしまうくらいの衝撃がハルヒにはあったわけじゃないですか。『とらドラ!』もそこあにで何回も特集するくらいずっと受け継がれていく作品。だから今の時代の『青春ブタ野郎』は、10年後に何かを見て、青春ブタ野郎を感じるな…と言われるくらいに残っていくんじゃないかという気がしますよね」
■作品を貫く謎の症状「思春期症候群」の正体は…
丸井「(桜島先輩は)透明人間になっただけではないですよね、記憶からもなくなっちゃっていますし」
くむ「すべての人の記憶から消される存在になるんですよね。でも形としては存在するから、人に当たりはするんだよね。なのに当たられた人は当たったということを意識しないようなブロックがかかるわけでしょ。それだけじゃなく、咲太と妹のあの謎の傷ですよね。これ、全て解決まではいかなくても、ある種の謎解き物語でもあるんじゃないかと思う。どこかで少しは謎の一端が開かれていくのかな」
美樹「思春期を脱したらなくなる、ということでは…」
くむ「思春期だけの話ならいいんだけど、大人たちにも見えないわけだからね」
丸井「誰かが操っているとか、そういうのがあるんですかね」
小宮「この“症候群”という言い方がキモだなと。“病”じゃなく。社会現象を指す言葉としても使われるじゃないですか。もしかしてこういう不安定な精神状態が社会現象として起きているという症状なのかな、と思えて。解決するしないじゃなく、もしかしたら現実にもあるのかも、というところがいいですよね」
美樹「そうなんですよね。誰かが操っているというよりは、なんとなくそれに近いことってありそうだな、って。思春期の不安定で繊細な時期って、そのくらいの気持ちになるよね、わかる…という絶妙なところがいいな思いますね」
丸井「もしかしたら本当に、精神的に傷ついたことによって体にも傷ができることがあるんじゃないかと、私もちょっと思っちゃったんですよね」
小宮「LINEとかネットで…というエピソードは実際にあることじゃないですか。それが本当の傷になるのがファンタジーというだけで。空気とか噂とかというのはリアリティがありますよね。そこがこの作品の一番面白いところかなと思います」
くむ「今っぽいところだよね。今の時代に作られる青春ものとしてSNSは欠かせないわけであって。空気を読まなきゃいけない世の中に対する、ある種の反逆の物語なのかもしれないなと思う。それが主人公である咲太なのかなと」
■ダメ系でも巻き込まれ系でもない『青春ブタ野郎系』主人公?
美樹「私、このタイプの主人公を自分の中で『自己犠牲型』だと分類していて。流行りというか、現代ってこういうことなのかなと。だから、自分を犠牲にしすぎないで解決していってほしいなと思っていて」
くむ「彼は別に彼女のためじゃなくてもやっちゃいそうだもんね。ということは巻き込まれ型に近いですよね」
美樹「そうかあ…。でも空気の一部にはならないタイプですからね」
小宮「その一番の要因を担うのが石川界人さんだと思うんですよね。声優さんが違ったら、例えばすごい後輩感が出てしまって先輩に振り回されたり、逆に落ち着きすぎてどっちが先輩かわからなくなったり、セクハラ発言が無理して言っているようになるところもあるかと思うんですけど。絶妙に、達観しているんだけど後輩なんだというバランスがとても上手いなと」
くむ「確かにね、これは本当に役者さんの力だなと思います。特に桜島先輩との会話のキャッチボール。うまく照れさせてんな!という感じですよ」
美樹「転がしすぎでしょう!(笑)」
丸井「天然のスケコマシだと思う」
くむ「そうですそうです、本当に」
小宮「でもある意味、そういうことに興味ないからできるのかなと思います。本当に性的に興奮を覚えてしまうと、無理じゃないですか」
くむ「そこがうまいんですよね。あまりにも性欲がなさすぎるキャラクターって非現実的な感じもあるし、でもギラギラはしているわけではない、というバランスがいい主人公だなという気はしますね。それが桜島先輩だけじゃなくて、朋絵に対しても素直に可愛いと言える感じ。それはモテるわ!」
小宮「そういう意味では、やっぱり『青春ブタ野郎』というのは、彼をすごく表現している言葉なのかも。ブタ野郎でもないし、思春期特有の青春バカという感じでもなくて。足すとそういう絶妙な表現になるのかな」
くむ「なるほどね。そう言われると納得という感じかな」
小宮「今後そういう風に呼ぶことになるんですかね」
美樹「この主人公『青春ブタ野郎型』だ、って(笑)」
3話で見事な最終回! と盛り上げてからの新エピソードもまたお見事。1クールであといくつのエピソードがあるのか、そしてすでに決定している劇場版はどうなるのか。構成の妙もまた次週を待ち遠しくさせてくれます。タイトルで敬遠していた方は、今のうちに追いついておくのがオススメです!
(笠井美史乃)