世界のかたちが変わっても。新海監督がいま伝えたいこと そこ☆あに『天気の子』特集まとめ

今週は、公開即録って出しとなりました『天気の子』特集です。前作『君の名は。』のメガヒットから3年。期待だけではない気持ちは確かにありましたが、そこはさすが新海監督らしさを存分に出しながら、今伝えたいことをエンタメとしてしっかり形にした、強い物語になりました。

番組本編では16:45まで本編ネタバレ無しでお届けしています。ぜひ劇場で鑑賞してから最後までお聞きください。こちらの記事もネタバレなしです!

そこあに「天気の子」特集 #592
「そこ☆あに」592回目は『天気の子』特集です。 2016年に大ヒットした「君の名は。」の新海誠監督による新作アニメーション映画。2019年7月19日に公開されました。 天候の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄される少年と少女が自らの生き方...

■「前作を見て怒った人をもっと怒らせたい」と言う監督の真意は?
美樹「パンフレットのインタビューでもそうですし、ネットとかでも。あとは、小説のあとがきでも(笑)」
くむ「本人にとっちゃ辛いと思うんですよ。新海監督って昔は、知っている人はめちゃくちゃ好き、という監督だったわけですよね。なので、そこまでの批判をもろにあびることはなかったわけだよね」
美樹「確かに」
くむ「それが、あそこまでの大ヒットのおかげでありえないくらいいろんなところで自分の作品の話題を聞くようになってしまったわけですよ。しかも、作品をdisられたり、下手したら本人そのものをdisられるようなことを、たくさん聞いちゃったわけだよね」
美樹「そうですねえ。それ以上に褒められていることの方が圧倒的に多いはずなのに、新海監督の中に残っていた言葉はdisられた方だったんだなというのは…。褒めてきた側としては残念でもあり、そういうのがクリエイターの魂を燃やすんだな、というのを初めて知って面白かったですね」
くむ「私はクリエイターでは全然ないですけど、やはり番組のことを色々言われれば、いい気持ちはしないですよね。しかも、100人の人から褒められても、一人の人からdisられたら、その一人のせいですごく落ち込むわけじゃない」
美樹「落ち込んでますね、くむさん…」
くむ「自分の耳に届いた、たかだか一言二言で傷ついていくわけですよね、私ですら。あれだけ大成功した新海監督ですよ。ここまで書いているということは、絶対怒ってますよね(笑)」
美樹「そんなところがすごく人間味があって身近に感じられて愛おしいというか。遠くで大きい人になっちゃったなと思いながらも、やっぱり生み出していくものの根本みたいな、そういうところはすごいわかる、って思えて嬉しかったですね」
くむ「そうね。結局、(批判した)彼らのおかげで今作は生まれたわけですよね」

■男気ある、強さが新しい魅力
美樹「新海監督の魅力って、繊細な心の描写とか、それを反映した映像美だったりとか、どちらかというと人間の弱さが愛おしく見える部分に惹かれることが多かったんですけど。それを踏まえた今回の作品で一番感じた気持ちが、監督の男気だったんですよ。単純にいうならすごくかっこいいストーリー。繊細さとか弱さと相反するような印象をこの作品に受けて。新しい新海監督の魅力を見せてくれたんだなと、いちファンとして感動しましたね」
くむ「あの大ヒットの後でしょ。めちゃプレッシャーだと思うんですよ。当然、今まで以上に、制作費についても裁量が与えられたと思うじゃない。それに応じた結果を残さなきゃいけない。まあ『君の名は。』と全く同じ数字を叩けるかといったらさすがにそれはね」
美樹「本当に、空前の大ヒットだから同じようにとは言わないけれど、その監督が作ったものなら、と思って見にくる人が増えたわけですから」
くむ「そのプレッシャーの中で作った作品が、少なくとも我々にはすごく響いてますよね。確実に、新海誠は一つ山を越えましたね。ヒットメーカーと言っていいのかな。ヒット作をちゃんと作り続けることができる監督に仲間入りしましたね」
美樹「大ヒット作の次の作品は大事だと言いますけど、この天気の子を見て、大丈夫だなって思えましたね」
くむ「今回はちょっと衝撃がありますからね、ラストに。この選択ができたというだけでも違う領域に入ったなと、やはり思いました」

ファンタジーを織り交ぜながら描かれるリアルな「いま」の世界、ギリギリアウトを超えて突っ走ってしまう主人公は、これまでの作品になかった強さを感じさせてくれます。前作を受けたファンサービスや、2020年を迎える前の東京の景色も見どころ。今この時に観ておきたい作品です。

(笠井美史乃)

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