今回の特集は、2014年に劇場公開された作品『楽園追放 -Expelled from Paradise-』。先日、地上波(TOKYO MX)で放送されたことを記念しての特集です。当時、劇場でご覧になった方からのコメントもたくさんいただきました。ありがとうございます!
普遍的なテーマを正面から描きつつ、時代を反映したメタファーも読み取れる、厚みのあるSF。そして映像的にはナチュラルな3DCGにゴージャスなメカアクションと、今でも全く見劣りしない素晴らしいクォリティ。でも胃もたれする重さではないので、幅広い方に楽しんでいただきたい作品です。
■妥協しないクォリティは時代を超える
たま「CGアニメが増えている中でも、先駆者でありながら今なお揺るがない地位というか。さすがに技術的にきついよね、というのが少ないなと思いますね」
くむ「CG系のアニメーションの怖さは、いくら中身が良くても、やはり技術の古さみたいなものがどうしても影響を与えるところだと思うんですよね。そういう部分が全く感じられないのはすごいなと。だって、技術の進化ってすごく速いわけでしょ」
たま「めまぐるしいですよ。新しいシェーダーとかもバンバン出ていますけど、それでも戦えるんですからね」
くむ「当時、できる最高のものを出したと水島監督がおっしゃっていたのが、今見てなるほどな、と思わせるものになっていますね」
■電脳世界は限りあるリソースを奪い合う格差社会?
美樹「私は、結局電脳世界もリアルもさほど変わらないんだなと思っちゃって。貢献の程度で生かされる人はいるかもしれませんけど、普通に生きていたら普通に最期はあるんだなと思うと、なんて世知辛いんだろうと。すごくリアルな未来を見たような気がして」
くむ「この手のSFは999の時代からですよ。機械の体をもらえれば幸せになれるのかというとそうでもない、みたいなのといっしょなわけで」
美樹「あちらにもデメリットがあるとは思いつつ、思った以上に自分たちに近ということが衝撃でしたね。生きる世界が違うだけで、ひとりの個人生きる悩みは同じなのかと。それがすごく面白いと思いました」
くむ「それこそ人が作ったものだから、という部分はあるかもしれないですね。人が考えた未来だから」
たま「結局、人の限界までしか行くことができないのかもしれないですね」
■人間とは? 人間らしさとは?
たま「何かあった時にバックアップから何度でも甦れる存在を果たして人間と言えるのか、というところじゃないですか。フロンティアセッターが、人間らしい対話ができた相手はディンゴが初めて、と言ったとき、アンジェラが微妙に入っているのかというのも気になったので。アンジェラは人間じゃない、のかな?」
くむ「今から人間になっていくんですよ、ディンゴのおかげで。どこまでいけるのか分かりませんけどね。これでもしアンジェラとディンゴの子供が生まれたりしたら、面白いことになりますよね」
美樹「ああ、それが”楽園を追放されたアダムとイブ”ということですね」
くむ「アダムの方はずっと地球にいたわけですけど。でも、このテーマがタイトルまさにそのままというのが、素晴らしいですよね」
1本の映画として必要なものがきっちり詰め込まれた上で、主人公たち、サブキャラクターたち、そして世界観の裏側まで、程よく残された含みが気持ちを引きつけてくれる気持ち良さ。人間て何なのか? どうあるべきなのか? あの”人”に託された可能性をもっと見てみたい気もしますね。公開当時の水島精二監督・東映アニメーション野口光一プロデューサーのインタビューもぜひお聴きください!
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(笠井美史乃)