こんにちは、ライターの笠井です。
7月31日配信『コンクリート・レボルティオ 〜超人幻想〜』特集<前編>はもうお聴きいただけましたでしょうか。奇しくも神の化身といわれる大怪獣が日本で再び暴れだしたタイミングでのお届けとなりました、原作・脚本の會川昇さんのインタビューです。
今回はリスナーの皆様から予想を上回る数のご質問をお寄せいただき、一体どうなることかと思いましたが、會川さんの丁寧かつ切れ味良いお答えで時間いっぱい充実した内容になっています。
人の数だけ視点が異なり、質問の方向性も様々。必然その回答も、世界観とそれに連なるSF設定、近代史とサブカル史と社会的思想、キャラクターの内面まで多岐にわたり、この物語のレイヤー構造はどこまで多層化しているのかと改めて驚かされました。會川さんの脳内マジ宇宙、略してIMUです。
そんな中、個人的に前半で最も印象に残ったのは「オマージュと”お題目”への問い」についてのお話です。オマージュとはもちろん昭和のアニメ・特撮で活躍した人々をモデルに生まれた「超人」のこと。しかし、ルックスや能力だけでなく、彼らの立場や存在そのものが背負う意味に当時の作り手に対するオマージュも込められていたとは!
「(『仮面ライダー』の企画・脚本に参加した)市川(森一)さんと長坂(秀佳)さんのお二人の存在はすごく大きい。クロード=長川神にその名前をお借りする事によって、自分の中ではここまでのこだわりが入っていますよと示したつもりです」(會川さん)
単に”それっぽい”わけではなく、誕生の元になった作品と作り手の意志の象徴として新たに「超人」となって神化の世界に生まれた彼ら。お互いぶつかり合うのも、それぞれに立場が違うのも必然というものですね。全くベクトルの違う個性をビジュアルで表現するために、キャラクター原案として多数の作家さんが起用されたことも改めて納得の思いでした。
そんなふうにオマージュを掲げながら、一方でストーリーはいわゆるヒーローもの的勧善懲悪では進まない複雑さ。1話から主人公の爾朗が清々しい好青年から謎のダークヒーローに変貌した姿を見せられる。2話では永遠の子供である風郎太が正義と悪の区別がつかない難しさに「いつからこんなややこしいことになっちゃったんだ」と泣き出す。
ちょ、一体どういうこと? と冒頭から混乱させられる一方で、そういうこともあるかもね、世の中そんなに簡単じゃないから……と自分を納得させに走っていたのですが、その発想は正に會川さんが言うところの現代の”お題目”なのでした。
「正義という言葉に対して、正義なんていくつもあると言っちゃうほうが今では”お題目”なんです」(會川さん)
自分風情が正義を振りかざしたって何も変わらない。下手をすれば誰かを傷つける、あるいは自分が傷つく、テロみたいなものじゃないか。そう思って、対峙しなきゃならない何かに目をつぶったまま、”お題目”を模範解答的な逃げ込み先にしていました。あるいは、そういう青臭いことは若い子に任せておけばいいし、とかね。
いやいや、そんなふうに当事者をやめてお客さん気分でいたら老害一直線ですよね。あぁ、危ないところで引きとめられた気分です。まだコンレボについていける(少なくともその努力はしているつもりの)自分でよかった(笑)。
「対立する悪がいるから正義が存在するというのではなく、はっきりしているのは”正義”という概念を誰かが持つ時には、必ず何らかの対立する”悪”を設定するということですね」(會川さん)
テレビは時代を映すもの、であれば今時のお題目的正義の在り方もまた今の社会を映したものと言えるのでしょう。けれど、今ばかり見ていたって手詰まりになるばかり。じゃあ次の時代はどうしますか? それを問うボールが、今そしてこれからモノをつくる世代に會川さんから投げかけられたのだと思います。
その投げ方もまたさすがに手が込んでいまして……という話はインタビュー後編でお聴きいただきたいと思います。どうぞ、次回の配信もお楽しみに!
(笠井美史乃)