今週は、シリーズ2作目となる『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』特集です。昨年9月のハイエボ1公開から1年以上経っていたんですね。タイトルからも今回はアネモネを軸にした物語であることがうかがえましたが、一体どうなるのか…期待半分不安半分で劇場へ行ったスタッフの感想は?!
本編12分まではネタバレなしで感想を語っています。まだご覧になっていない方はぜひ鑑賞後に続きをお聞きください(この記事もこれ以降ネタバレを含みます)。
■え、そこなの?! すごい形で新作が来ました
くむ「ハイエボリューション1とは全く違う、ほぼ新作ですよね。(ハイエボ1は)新しく作られたパートとテレビシリーズの組み合わせで、なるほど総集編の作り方の一つだよね、と感じたわけですよね。でも、今回の『ANEMONE』は総集編じゃないよね、全然」
たま「こう来るか!という感じの内容でしたね」
くむ「もちろんテレビシリーズの素材も使われているんですけども、それをいかにうまく活かすかという部分も含めて、新しいアプローチできたなという感じです。完全なる新作映画を見せてもらいました。ただこれ、2000年代というか、イメージ的には90年代からつながるものだと思うんだけど、私の中で今回見たときの第一印象というのは、エウレカでありラーゼフォンでありエヴァンゲリオンでありゴジラでありビバップであり…という、そんなイメージだったんですよ」
たま「あぁ、なるほどなるほど」
くむ「他にも要素はあると思うんだけど。あの頃見ていたアニメを今にアップデートした、みたいな感じなんだよね」
たま「あの頃ワクワクしたもののスピリットやマインドみたいなものは感じるけど、でもそれそのものじゃなくて、もっと新しい何かであったような」
くむ「そうなんですよね。まさに今だからこそできるものとして、過去のアニメのカッコよかった部分をちゃんと入れつつ、オリジナルのメンバーが作ってくれたなという気がしましたね。なので、あの頃アニメをワクワクして見ていた人は、ぜひ見に行って欲しい作品だと思います。ハイエボ1を見ていなくても楽しめる内容にはなってますよね」
蒔田「そう思います」
くむ「ハイエボ1はかなり難解な造りをしていたと思うんですよ。それに比べると、今回はすごくわかりやすい」
蒔田「その辺はもう、絵作りから気を使った感がすごいですよね」
くむ「気にはなっていたけどまあいいか、と思っている人ほど行って欲しい。決してソンはさせない映画だなと思いました」
■”エウレカ世界”をひとつに編み上げる存在に
たま「作品全体的にいうと、3部作でどうやってまとめるんだろうというのはずっと気になっていたところなんですけど。なるほどこれなら次で終わるわ、と。こういう形で話を収束させて行くシリーズにしたということに、それは発明ですよ!とめちゃくちゃ思いましたね」
くむ「要はすべての世界を…ということですよね。“エウレカセブン世界”ですよね」
たま「そう。彼女が見た世界の夢としてまとめたシリーズがこれ、という感じになっているじゃないですか。だから、このシリーズだけの解釈としても取れるし」
蒔田「エウレカシリーズ全部としても取れるということ?」
たま「そうですね。エウレカって本当にいろんな作品が派生していたタイトルで、よく言えばすごく多様性がある作品だったけど、まとまらないというか」
蒔田「枝分かれしているのを1本にまとめた、ということなのかな」
たま「そうですね。スターシステムに近いようだったものを、全部のエウレカという形態にまとめたのがこのシリーズという形にしちゃったので。これまでの全てのエウレカセブンは、エウレカセブンというタイトルだったんですよ、と言われた感じがして。すごくしっくりまとまった感じがしたんですよ」
くむ「全ての存在を認める、という言い方はあれかもしれないけど…そうだと思うんだよね」
蒔田「ターンAガンダム的ですね」
たま「うん、全ての世界はここにつながる、みたいな感じです。シリーズをいっぱい見てきて、すごく好きだった作品もあれば、これはな…と思うのもあったけど、こうやって繋がっていくと思うと全ての作品が好きだったなという気持ちになりました」
■画角の問題も物語の理にかなった演出に
蒔田「ハイエボ1は昔のテレビサイズのシーンが多くて。言ってしまえばサンライズ的総集編、みたいなイメージは結構あったんですけど。今回のはそんなことなかったどころか、そのテレビサイズのシーンの使い方によって、ハイエボ1がこういうことだったのか、という意味を持たせるというのは、びっくりしましたね」
たま「テレビサイズで左右に黒枠が出るのを演出に組み込んでいるの、めっちゃすごいなと思って。結構感心したんですよね。枠がある上に光がぼやけてくみたいなのとか、枠をはみ出していくような表現とか、え、すごいと思って。新規カットもわざと枠つけているところもあって。意図的じゃん、というところはすごく面白かったし、考えられた作りなんだな、と思いました」
蒔田「画面の使い方が自由だよね」
くむ「旧作カットを使う部分は本来なら新規作画を削減するためじゃない、総集編である以上。特にハイエボ1はそうだったわけですけど。その流れから行くと、そうは取れないような、ちゃんと意味があるものとして使われているんだよね。“仕方なく”じゃない」
蒔田「そうですよね」
くむ「もちろん新作で描きたいかもしれない。でもやはり予算とスケジュールの関係もあると思いますし、意味のある映像として(旧作カットが)使われているからね」
蒔田「アイデア勝利だと思いますよ、すごいと思う」
くむ「『ANEMONE』になってより昇華されたなという感じはしましたね」
これが第1部の続き? と最初は意外さに驚かされましたが、強いストーリーと計算された演出であっという間に飲み込まれ、最後は納得の結末へ。見せ場はグイグイ見せるし聴かせるところはジーンと聴かせる、映像としてもメリハリの効いた気持ちいい作品でした。もう第3部には期待しかありませんね!
(笠井美史乃)