純粋ゆえの共依存が尊い… そこ☆あに『リズと青い鳥』特集まとめ

今週の特集は、劇場作品『リズと青い鳥』です。ストーリー的にはテレビシリーズ『響け! ユーフォニアム』の続編に当たりますが、主人公が変わったというだけでは済まない、大きく風合いの異なった作品になっています。今回は先日無事出産したばかりの那瀬ちゃんが出演。くむさんと二人でたっぷり語っています!

そこあに「リズと青い鳥」 #529
「そこ☆あに」529回目は現在公開中の映画『リズと青い鳥』特集です。 2015年から2016年にかけて放送されたTVアニメ『響け!ユーフォニアム』の続編にあたりますが、本作にはこのタイトルがどこにも付けられておらず、一本の劇場作品として楽し...

■出てきたのは先生だけ……男性の存在を拒絶した世界
くむ「練習しているシーンだけは、男性がいないわけにはいかないのでいるんですよ。でもピントを絶対合わせない」
那瀬「ほんとですか!それは見てなかった」
くむ「どこかで出るんじゃ?と思っていたんですけど。教室の中、廊下のシーンとかでも、基本いなかったはず。いても、多分望遠でボケてたはず。顔がはっきりとわかるようには描いてない」
那瀬「徹底していますねえ」
くむ「セーラーじゃない白いワイシャツだから男だなというのはわかるんだけど。男子生徒を写さないようにピントの上げ下げでごまかしている。だから、この作品に男はいらないって、そういう意味なんだよね。ここまで徹底してやられたら」
那瀬「意図的な排除ですよね」
くむ「そう、男の排除をここまで徹底してするってすごいなと。共学だよこの学校、と思いながら。本編の方でも二人の世界というのはなかったわけではないけれども、それでも普通に学生らしく男の子がちゃんといたしそこがある種、『響け!』の面白さでもあったと思うんだけど。それを徹底して排除したらこんな世界が出来上がる」

■学校の描写と並行する、物語世界
那瀬「物語描写の方で、あのリズと少女が同じ声優さんだと、見ている間、全然気づかなかったです。本田望結さん。ドラマとかにも出ている人ですよね、子役さん」
くむ「声優ではないんですよね」
那瀬「まだ13歳、すごいー!」
くむ「本人、受け入れられるかすごく気にしていたみたいなインタビューを読んだ記憶があるんですけど」
那瀬「そんなこと本人が言ってるの?13歳にしてそんなこと気にするの?すごいー」
くむ「物語の中のキャラクターという風にして考えたら、合っていたんじゃないですか?」
那瀬「すごく合ってましたよね。芝居の仕方がちょっと違うから、ちゃんと別の世界だというのがわかりやすかったですし」
くむ「そうそう、そこは大事だと思いますね」
那瀬「演技力もすごいと思いましたよ。だって、わからなかったもん、リズと少女と。ふわふわしている感じがよかったし。物語世界の描写も美しかったですね。尊かったです」

■「歴史に残る」と思わせる作品を作り続ける京アニ
那瀬「学校というある意味の一幕劇じゃないですけど、京アニという閉鎖空間だから、決まったメンバーだからこそ作れる“劇団感”のような」
くむ「阿吽の呼吸で、求めているのはこれだなというのが出てきていそうな感じがする。企画の意図をちゃんと理解して、周りがきちんとそう動いてくれるのって、その時ごとに座組みをしていると難しいと思う」
那瀬「難しいでしょうねえ。分かり合えているスタッフの強みってありますよね」
くむ「だからこそ、このすごい空気感の映像が出せるんじゃないのかな」
那瀬「(山田監督の)けいおん、聲の形、リズときて、なんかもう凝縮っぷりがすごいじゃないですか」
くむ「でも『響け!』は男性監督がいるわけじゃない。あれはあれでテレビシリーズとしてバランスが綺麗に取れている」
那瀬「プロデューサーも有能ですよね、そこで山田尚子さんを監督じゃない場所に置いたという」
くむ「じゃあ今度はと、山田尚子を100%でやらせたら、こういうものが出来上がるんですよ」
那瀬「そういうことですよね。やばいですよ、この次どんなエスプレッソを飲まされるんだ、みたいな感じじゃないですか」

言葉で説明することなく、一つひとつの演出によって生み出される間や空気感に、圧倒され続ける90分でした。音楽や演奏が素晴らしいのはもちろん、全編通して感じられる静けさもまた凄みがあります。ぜひ劇場で体感してください!

(笠井美史乃)

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