これは語りたくなる! 噂に違わぬクオリティ そこ☆あに『若おかみは小学生!』特集まとめ

今回は、先日NHKで放送された映画『若おかみは小学生!』特集です。上映時からそのクオリティの高さが話題になっていましたが、今回の放送を機に初めて視聴した方も多いのでは。映像はもちろん、物語の組み立ても細部の演出も、見逃せない美しさです。今回の番組は、ぜひ視聴してからお聞きください。

そこあに 映画「若おかみは小学生!」特集 #635
「そこ☆あに」635回目は映画『若おかみは小学生!』特集です。 原作は令丈ヒロ子による児童文学シリーズ。講談社青い鳥文庫から2003年刊行、全20巻で完結済み。 TVアニメが2018年全24話で放送。今回の特集の映画版も2018年9月から上...

■児童文学原作、絵柄的にも自分向けじゃないかも…?
くむ「元々が児童文学ということで。子ども向けなんですよね。イラストも可愛い感じで。小学生くらいを対象とした作品なのかなという感じを受けたんですけれども。テレビシリーズ版に関しては、ターゲットはやはりそちら(子ども)ということでいいんですかね」
たま「と思いますね。だからといって大人が見れない作品というわけじゃないんですけど。より、重たくなく、日常生活を軽やかに描いている感じなので、若い子向けかなという感じはします」
くむ「ただこれ、劇場版は結構衝撃的なスタートですし。絵柄は、小学生がターゲットと言われても納得するんですけれども、内容はどちらでも見られるような物語になってますよね」
たま「大人の鑑賞に耐えうるというのは、語弊があるかな…でも細部までこだわり抜いた作品だなという気はしますね」
くむ「私はやられたなと思いました。当時、評判が良かったのはもちろん知っていましたけど、正直なところ、映画のキービジュアルを見る限り、自分が見る作品かという部分で、ちょっと悩んじゃったよね」
那瀬「それは非常にわかります。何が一番、自分向けじゃないなと思ったかって、私はウリ坊で。ウリ坊の前歯のビジュアルって、昭和じゃないですか。もちろん作品を見れば、昭和で合っているんですけど。にしても、今のアニメでこの歯は見ないぞ、というのと、まあ女児向け感は強かったですよね」
くむ「そうなんですよ。だからこれを乗り越えて、劇場まで見にいくってすごいなと思ったんですよね。ただ、ここまでいろんな人たちが勧めるって、どんだけの作品なんだろうと思っていたので、ちょうどこのタイミングでNHKで放送されたというのは、やっと見る機会を作ってもらってありがたかったと思います。こういう良い作品を放送してくれると嬉しいですよね」

■「描かれていない」からこそ読み取ってしまう
那瀬「想像力って人生経験値によって育てられていくものだからこそ、大人は辛く、子供は楽しく見られるんだろうなって。そこってすごい、計算ですよね」
米林「おっこちゃんだけじゃなくて、他のキャラクターも、きっとこういうことがあったんだろうなって、想像力が掻き立てられたので。いろんなキャラに視点を合わせてみても、グッとくるポイントがいっぱいあるなと思います」
那瀬「多くを語らないのもニクいんですよ。そことそこの間に、おばあちゃんは一体どんな葛藤があったんだろうと思うと、もう…辛くて…。でも辛くなっているのは自分だけなんですよ。だって、絵の中にはそんなのないから」
くむ「あえて描かない、というのがいいですよね」
たま「旅館を訪れるお客さんたちも、バックボーンに何があったのかという話は、あまり詳しくされないじゃないですか。だから、あのお客さんは何かあったのかもしれないなと慮ることしかできない、というのがすごくいいですね」
那瀬「自然と思いやりを持ててしまうよね」
たま「グローリーさんはフラれてきたよ、みたいな話はあったけど、その前後のことは何となくしかわからないし。あかねくんもそうですよね。お母さん亡くなったよという話はありましたけど、何があったんだろうというのは想像しかできないから」
那瀬「どうやって亡くなったかはわからないし、そこを描こうともしていない潔さ。だけどその後にあかねくんのお父さんが(「春の屋」を雑誌に)紹介してくれるとか、そこもニクいじゃないですか!繋がりも上手に使っていて。本当にバランスがいいなと思います」

■絵の描写、行動の描写から生まれる世界の存在感
那瀬「メガネ、すごいよね。老眼鏡と別のメガネと、描き分けしているんでしょ」
くむ「レンズの屈折率が違いますからね。実写ですら、下手したら役者さんに合わせてレンズ入っていなかったりするじゃないですか。でもこの作品は、ここまで描くのってめっちゃ大変だよね、というくらい、こだわって描いてますよね」
たま「徹底的に、リアルと地続きの世界というのを作っているよな、という気がします」
那瀬「そうだね、作っているという言い方すごく納得する。コミカルな描写と、リアリティの描写がすごく入り混じっているのも面白いなと思ってさ。最初におっこが、若おかみ?!ってびっくりするところとか、面白ポーズ取るじゃない。だけど、ポーズ取ってる手前でお茶こぼれている描写が、めちゃリアルじゃないですか。あのゆっくり感というか、ちゃんとフキン出して拭いているとか。丁寧にするポイントがうまいんですよね」
くむ「卵焼きを切る描写の反射とかさ。こだわらなくていいじゃん?と思いそうなところをめっちゃこだわっているおかげで、驚きがあるよね。自然すぎて」
たま「ご飯の描写も良かったしね! めちゃくちゃ美味しそうだったもん、何もかも」
くむ「作画好きの人たちがはまったのもわかるわ、という描写でしたね」
たま「細かい描写でいいなと思ったのが、春の屋に来たばかりのおっこが、虫をめちゃくちゃ嫌っていたのが、最後は手で握っても大丈夫になってたじゃないですか」
くむ「1年の成長ですよね」
たま「お客さんに触らせる気なの?って言われていたのが、それをこなしていくうちに、彼女は慣れていったんだなと思うと、成長が見えるよね」
那瀬「虫が触れるようになるのは、かなりこだわりポイントだったって、いろんなインタビューにも書かれていましたね。実際にあったんですって、取材で旅館へ行った時に部屋に虫が入ってきて、それを旅館の人がとってくれるということが。だから入れたかったと、いろんなところで話されていました」

かわいい絵柄とベタなギャグ、奥行きのあるキャラクターたち、厳しい現実…と、本当に豊かで懐の広い物語を見せてくれました。一生に一度は見ておきたい作品と言えるのではないでしょうか。放送を逃してしまった方は、下記でレンタルも可能なので、ぜひご覧ください。

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(笠井美史乃)

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