何が変わった? わかりやすさの理由はコレでした! そこ☆あに 劇場版『Gのレコンギスタ I』「行け!コア・ファイター」特集まとめ

今週は、レンタル配信も開始になった劇場版『Gのレコンギスタ I』「行け!コア・ファイター」特集です。テレビシリーズ放送から約5年。物語はほとんど変わっていないのに、劇場版で「わかりやすくなった」との声が多く聞かれるのはなぜなのでしょうか。今回は富野作品初心者の方にぜひ聞いてほしい、「富野節」の読み解き方トークです!

そこあに「劇場版『Gのレコンギスタ I』「行け!コア・ファイター」」特集 #614
「そこ☆あに」614回目は劇場版『Gのレコンギスタ I』「行け!コア・ファイター」特集です。 2019年11月29日公開。TVシリーズは 2014年10月〜2015年3月まで全26話放送。総集編である劇場版「Gのレコンギスタ」は5部作を予定...

■初心者にも入りやすい濃度になった「富野節」
那瀬「これまで富野さんに対する苦手意識みたいなものがどうしてもあったのが、すごくシンボリックに、富野さんてこういう作家なんだというのがわかりやすくなったけれど、富野さんの“味”はちょっと薄味になった感触がある」
仮面「劇場版は薄味になっております」
那瀬「でもすごく、私にとっては食べやすかったです。だから富野初心者という点でも入りやすいと思ったし、富野さんらしさというのも存分に味わえたなと思いました」
仮面「富野さんの作品に慣れすぎてるから、それがどのあたりなのか僕にはわからないんですよね」
那瀬「わかりやすいところだと、かなりセリフ回しが特徴的だなと思うし、その上にドラマの濃厚さというか、複雑さ。やっぱりこの段階が必要なんだなと。初心者には富野さんのセリフ回し面白い!から入らせて欲しいと思った。複雑さはその後じゃないと受け入れきれない」
くむ「クセになるんだよ、あれは。そこでそのセリフ出る?みたいなセリフが出ますもんね」
那瀬「そうなんですよね。そこにすごく人間の深みも増されるし。この場面でそういうこと言うんだ、って思うけど、空気読めない感じともまた違う愛らしさがあるな、と思う場面がたくさんありましたね」
仮面「この人、こういうこと言っちゃう人なんだな、どういう気持ちで言っているんだろう、と想像させてくれるところ。むしろ、想像しないとお話についていけないところはあるかもしれない」
那瀬「そこまでドラマの部分に関わらなくても、冒頭で教官が『彼女がいないやつの気持ちも考えろ』みたいなこと言うじゃない。割と深刻なシーンになるのかなと思ったら、ちょっと恋愛沙汰を挟むんだ、というのもすごく面白いなと思いましたね。あの教官が、こいつ悪いやつじゃないとそれだけでわかるみたいな」
仮面「そういうところはすごくうまいよね。それで言ったら、クンタラという言葉がもう定着しているというだけで歴史を感じさせるとか。僕らの世界にも宇宙世紀のガンダムにもなかったのに、あって当然のワードとして出てくるから、宇宙世紀からだいぶ経っているんだな、みたいな。そういうところがわかったりもするんですよね」
那瀬「世界づくりというよりは、社会、その雰囲気から丸ごと作るのがすごく巧みな、天才的と言ってもいい、そういう人なんだなと感じますね」

■テレビシリーズから5年、時代が追いついてきた?
仮面「(Gレコ制作の)関係者の方と話した時に、富野さんはもう天才だから一般人の2周3周先を行ってる。だからその時に周りに理解されなくても、後々みんなが追いついてくると思って作ってるよ、と言われたんですよ」
くむ「その通りなんじゃないですか。私もテレビシリーズの時は、面白いと思ってはいたけれど、ちょっとついていけない部分も正直あったと思うんです。でも今回の劇場版は非常に楽しめました。テレビシリーズを見ているから、という理由もあるかもしれないけど、こんな分かりやすかったっけ?と思ったくらい。で、それってガンダムのオリジナルのテレビシリーズの後に、劇場版の3部作を見たらすごくわかりやすくなっていた、みたいなことがあったので。ちょっとそれを思い出しちゃったな。あとね、これはもともと劇場っぽいような物語だったんじゃないのかなと思って」
仮面「ずっと続いている話でしたからね」
くむ「そう。1話1話で区切るのが本来難しい作品を、テレビシリーズでやっていたんじゃないかな」
たま「それは確かにあるかもしれないですね。今回の1作目はアイーダの心境に一区切りついたところまでだったと思っているので。キャラクターの成長が見えたところが区切りになったと感じていて。これ、テレビシリーズの時はちょっとアイーダに寄り添いづらいかも、と感じていたので」
くむ「それで1週経つというのがあまり良くないのかもしれないね。ここで一区切り、と思えるところまでまとめて見せてくれたから、こんなに見やすい作品になったのかな。そういうのも含めて、時代が後から追いついてきたのかもしれないね」

■キャラクターの見えない部分をつなげる、小さな補完
仮面「テレビシリーズでよく、主人公の態度がコロコロ変わるとか、何考えてるのか全然わからないと言われていたのがすごく嫌で。映っていないところで悩んでいたかもしれないじゃんとか。その人がここまでの間にどう整理つけたのかな、という部分もちょこちょこ拾えるセリフがあったでしょ、みたいなところがすごく多かったので。そういう想像する楽しさも魅力の一つだと思っていたんです。それが真逆に、ダメなところと捉えられたのがすごく不満でしたね」
たま「いま作られている作品の文法とはちょっと違う文法で描かれた作品だなというのは感じますね。良い悪いというよりは、本当に違う」
那瀬「なんでだろう、テレビシリーズより劇場の方が、きっとこのキャラクターは裏で悩んでいるんだろうなというのが、すごく想像しやすかったんですよ。やっぱりキャラクターにドラマをフォーカスしたからなのかな」
仮面「それはあると思う。ベルリがアイーダに対して、この人はあの時のことを覚えていないから僕のことをこんなに叱れるんだ、というセリフ、あれはテレビシリーズにはなかったんですよね、確か」
那瀬「あ、そうか」
仮面「付け足すことによって、じゃあ他のところももしかしたら…と想像が広がりやすい作りになっているのは確かだと思います」
たま「ちゃんと考えている人間なんだなと、受け取りやすくなったということかもしれないですね」

テレビシリーズ未視聴の方でも大丈夫。むしろ、見ていない方にこそ劇場版から入ってほしいとおススメできる作品です。現在、公開劇場拡大中。レンタル配信も始まっていますので、富野作品初心者の方もぜひ挑戦してみてください!

(笠井美史乃)

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