1988年3月12日の公開から、間もなく丸30年。今週は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』特集です。『機動戦士ガンダムUC』や『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を経て、1年戦争の過去やその後、また登場人物たちをより深く知った我々にとって、改めて『逆襲のシャア』はどんな風に映るのでしょうか。人物、ストーリー、作画に音楽……見直すたびに新たな発見のある作品です。
■公開から30年、冨野監督40代の作品
くむ「コメントにも頂きましたけど、当時の冨野監督よりも私(年齢が)上なわけですよ。だからねえ……やっぱり凄いものをこの人は作っているなと、改めて思ってしまいますけどね」
蒔田「中学生の時はクェスがすごく嫌いだったというのもあるんですけど、嫌な女性を描くことが多いなと、その時から思っていたんですよ。でも、自分の年齢が上になっていくにつれて、仕方ないのかなと、許せる部分が実は多かったんだなという。感想が変わる部分がすごくいっぱいあるので」
くむ「人を描いているという感じだよね。視聴者に媚びたキャラクターじゃないというか」
蒔田「そうですね、好かれるような見せ方はしていない。でも見る側が理解してくるようになって、その人を許容できるようになると、そこまで憎みきれないなっていう」
くむ「魅力が見えてくるっていうのかな」
■伝説的キャラ、シャアの好感度が上がった?!
美樹「『逆襲のシャア』を初めて見た感想としては、多分みんなと違うんですけど。例えばサイコフレームの情報をあえて連邦に教えたところとかも正直痺れて、どこまでプライドが高いんだろうとか。イヤイヤながらもジオン軍の総帥としてのイメージ作戦に頑張っていたりとか。自分の役割を理解して行動しているし。外面はいいというのか。人の利用の仕方も心得ていて、クェスとかも手玉に取って。そんな中でアムロとララァの前だとあれだけさらけ出しちゃうみたいな、情けない人間くささも含めて、結構好感度が上がったなと素直に思って。もしかして、結構女性的な感想なのかな。だから実際に、ファーストとかを見ていて、逆襲のシャアを見た人って、シャアのイメージがどうなったのか、当時の人たちの感想が気になります。かっこ悪いと思ったのか…」
たま「大人になろうとして、政治とかに頑張ってみたりもしたけど、やっぱできませんでしたってとこをみると、ほんっと子供な人なんだなと。今回見て思いましたね。前に見たときは結局何したかったんだろうと、結構思ったんですけど。今回、だいぶ印象変わったかもしれません」
蒔田「そうそう。美樹ちゃんが言ったように、外面とか自分の役割を理解してやっているところもあるけど、アムロとララァの前とか、自分の本当にしたいことみたいなのが、すごい私情に寄っているっていう。そういうところはいいなとは思うんだけど」
くむ「人間くさいんだよね、結局」
蒔田「人としていいな、仕方ないよねって、すごい共感できる部分がこの人にもあったんだと思うと嬉しいところもあって、そこは魅力なんだけど。まあ、君もうちょっとどうにかならへんかったかな、というのはみんな思っているよね」
■映像作品としてのクォリティがすごい
くむ「30年前のアニメですけど、戦艦の描写とか、改めて見ても大画面に耐えるというか、細かいですよね」
たま「現代の技術はこの頃にはないんですけど、その代わり今だとできないマンパワーみたいなものがあるじゃないですか。そこが、細かい描写だったり、仕草だったり、細やかな部分に繋がっていると思うんですよ。そこは今できないことなので、今見ても価値のあるものだと思う」
くむ「もちろん、ガンダムはガンダムでかっこいんだけど、何が好きって、ラーカイラムがさ!かっこ良くない?」
蒔田「ラーカイラムとか、ラーチャターとかのクラップ級とか、あの辺はいいですよね。強そう」
くむ「あとやっぱり、ラストの最終戦闘に臨むときには、モビルスーツがワイヤーで固定されていたりとかさ、タイヤがいっぱい付いていたり。あれは結局、被弾したりなんかしたモビルスーツが…」
蒔田「ぶつかった時のクッションなんでしょうけど、あの大きさのタイヤ……んんん?っていう(笑)あれかな、コロニー作った時の重機のタイヤの払い下げ?」
くむ「めちゃくちゃデカいよね。戦闘機のタイヤとかじゃないよね。でも、ああいう細かな描写とか、レーダーの小さいパーツみたいなものがそこかしこにあったりとかするじゃない。CG使っていないわけじゃないんだけど、使っているのはスイートウォーターのところだけなんだよね、確か。人がマンパワーで描き切ったメカの描写というものの貴重さですよね」
逆シャアといえばシャアのことを語らざるを得ないわけですが、それもアムロとの対比があればこそ。また、ミネバ様曰く「シャアにはあった魅力があなたにはない」と言われたフル・フロンタルもまた興味深いキャラクターでした。シャアとアムロを取り巻く女性キャラ論、モビルスーツ論、現代にも結びつく移民論……話はあちこちに及びましたが、それだけ今観ても語りがいのある作品だということがよくわかりました。またどこかのタイミングで観直したい作品です。
(笠井美史乃)