夏アニメ青田買いで評判を集め、9月には特集を配信しました『タイムトラベル少女〜マリ・ワカと8人の科学者たち〜』。最終回までたっぷり楽しませてくれた作品でしたね。今回は、ヤマサキオサム監督をゲストにお迎えしてのインタビューをお届けします。今だからこそ聞ける「これぞウラ話」というネタ満載になっています。聞かなきゃもったいないですよ!(以下、敬称略)
■最近珍しい、玩具やソフトの販促でない作品という立ち位置
ヤマサキ「エデュメーションという言い方をしていますが、教育とアニメーションを合わせることで楽しく学べるとか、学ぶきっかけになるような作品にしたいと思っていて。そういうコンセプト自体が他の会社では成り立たないので、そこが不思議な作品と思われている一つの要素だと思います」
くむ「昔はあったのかもしれませんけどね。ここ何年も見ていなかったという驚きはあります」
ヤマサキ「一社提供で、子供たちに向けて良い作品をアニメーションで見てほしいとお金を落としていた時代が、かつてあったんですね。それがいろいろな社会的状況の変化で、成立しづらくなったというのはあるのかもしれませんね」
■歴史上の人物を描いてきた監督ですが……
ヤマサキ「ヨーロッパでは何百年も前の建物や、ヘルツやボルタに関しては大学がそのまま残っていたりするんですよ。彼らが住んでいた歴史的な環境が、写真や絵で残っていたりするので、そこは嘘がつけなくて、後でいろいろ修正したこともありました」
那瀬「国も時代も行ったり来たりするので、大変だったと思いますが」
ヤマサキ「そうですね、設定制作の方はすごく苦労したと思います。苦労して資料を集めてこれでいい、と思ったものが実は年代が2〜3年違っていたとか。最終回のエジソンの写真も、最初に絵コンテで描いたものと画面になったものが違うんです(笑)」
■取り残されてしまった秘書・黒木さん、でもオープニングでは…
ヤマサキ「オープニングでエジソンのそばに御影と黒木がいるんですけど、あれは実は本編の後のドラマを考えていたんです。何十年後かに旬がTSSの実用化に成功して、それが世の中に出て行く。それを開発するための資金を出したのが御影のいなくなった後の会社を守り続けていた黒木、というイメージです。実用化の一番最初に過去へ飛ぶのが黒木、と何となく自分の中で思っていて、あのオープニングにつながっています」
那瀬「御影様を助けに行くために黒木は奮闘しているんですね!」
■コメントに「家族で楽しんだ」という声多数!
ヤマサキ「僕らが望んでいた形でしっかりハマっていただいたというのは、非常にありがたいです。科学が面白いかもしれないとか、歴史書や科学書を買って読み直してもらったりすると、この作品を作った甲斐があったと思いますね」
那瀬「子供の将来の夢ランキング、一位が公務員というのが私はまだ信じられないんですけど……。面白いものを面白いと思って探求していいんだよと言ってくれた作品だなと思います」
ヤマサキ「僕もゲームなどを作っていたので責任の一端はあると思うのですが、数時間とか数日やれば達成できる、それができないと自分に力がない、みたいな判断をすごく早い段階でしてしまうのがとても良くないと思っていて。ずっとやり続けたり考え続けたりしていると、突然何年か後にできるようになったり……というのが世の中全般の出来事だと気付いてもらえるといいなと。そういうものが伝わっていると嬉しいですね」
キャラクターの名前の意味、科学者それぞれのイメージカラー、緻密な設定制作、未来の本というアイデア……緻密だけどストレートに伝わる物語は、こうしたたくさんの要素に支えられていたんですね。「子供向けだからこそ、いい加減なつくりにはしたくない」という監督の言葉通り、エンタメ作品として幅広い層から支持を集め、当初の予定になかったBlu-ray Boxの発売も決定したという愛され作品になりました。物理、天文、医学など、他の分野での続編を見たい、という声も多数いただきました。ぜひ実現できるよう、応援したいですね!
(笠井美史乃)