6月28日、『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』のイベント上映が開始され、都内の劇場で舞台挨拶が行われました。登壇したのは、草薙素子役・坂本真綾さん、素子の恋人として登場するホセ役・鈴木達央さん、黄瀬和哉総監督、シリーズ構成・脚本の冲方丁さん、製作総指揮のプロダクションI.G. 石川光久さん。
今作は過去の攻殻シリーズでも見た事のないようなストレートなラブストーリーとなりましたが、演じる側としても驚きが多かった様子。坂本さんは、「拗ねる」「照れる」など、想像できないような素子の姿が台本に書かれていて「このセリフどうやって言うんだろうとか、いろいろびっくりすることがあった」と言います。
石川さん曰く「(ホセ役で)フェロモンの男としての地位を不動のものにした」という鈴木さんは、原作からの攻殻ファン。素子の恋人として登場するホセを「すごい勢いで捨てられるのかと思っていたら、思った以上に重い役」であることを知り、何度も台本を読み返したそう。
鈴木さん「大人っぽくも見えるし、物事への固執の仕方が子供っぽくもあり、(全身義体のホセは)見た目の年齢感とは違うかもしれないと疑問がわいた。ARISEの”未来”である作品で素子が気にしている男たちを並べて全て見直せば何か共通項があるはずだと思い、そこから少しだけヒントをもらえた。そういう所で、今までの攻殻という作品に助けられました」
坂本さん「色っぽさも必要だけど、どこか青さも欲しくて、でも達観したようなところもある、不思議なキャラクター。達央さんの声が入ったことでキャラクターが完成して見えたので、声優さんてすごいなーって、本当に思いました。」
しかし、黄瀬総監督によれば企画の発端は「単純に脚が描きたかった」というもの。その上で、攻殻でやったことをないものをやろうと「ラブストーリー」をテーマにしたことで、企画会議に集まった全員が「頭が真っ白に(冲方さん)」。そこで「ラブストーリーで脚、というと人魚姫しかない」というアイデアを持ち出したのが冲方さん。黄瀬総監督からの具体的な指示は何もなかったと言いますが……
冲方さん「原作を10回20回と読み返し、その中で素子が求める男性像を抽出しつつ、素子に合法的に触れる事のできる役を設定しなくてはいけないということで、医師=義体技師だろうと。」
黄瀬総監督「絵的にはイケメンになればいいかなと考えていたのですが、上がってきた脚本を読んで、なるほど、うまいな!と(笑)」
一方で、今回ストーリの軸になるもう一人のキャラクターがトグサ。ようやく9課のメンバーが全員そろう回でありながらラブストーリーが主軸という異種格闘戦の中、「生身のトグサと並べることで素子の恋愛観に逆説的にリアリティが出る(冲方さん)」という発見もあったとのこと。
冲方さん「トグサは正しい事しか言っていないのに、素子がそれにイライラしまくる。そこも素子の新しい心情として描けたのではないかと思う。」
そしていよいよシリーズ最終話『border:4』が、9月6日に上映開始となることが発表されました。実は、border:4の脚本は当初の企画では第1話目に使うはずのものとして先に完成していたことが石川さんの話で明かされました。時間軸で言えば従来の攻殻に最も近く、ファンに受け入れられやすいのではないかとの考えからでしたが、あえてそうはしなかったとのこと。”第4の攻殻”として、黄瀬総監督をはじめスタッフの方々が前作をなぞらずゼロから作り上げてきた、ARISEという作品のチャレンジングな姿勢がここにも色濃く現れています。
石川さん「1〜3を見てくださった方が、こういう4を見たかったという内容になっているし、これまでの攻殻のファンの方が、こういう攻殻を見たかったと思うものが全て集約されています。」
最後に、鈴木さんと坂本さんからのメッセージで舞台挨拶が締めくくられました。
(左から)黄瀬総監督、冲方さん、坂本さん、鈴木さん、石川さん
鈴木さん「border:3では、皆さんの知らない素子を存分に見ていただきたい。その素子の生き方にひとつの区切りをつけたホセという男の生き様も見て欲しい。どうしても言っておきたかったのが、ホセが地味に冲方さんに似ているのがすごく気になって(会場拍手と笑い)、これは何かしら意図があるんじゃないかと(笑)。そういう部分も気にしながら、何度も見かえして愛してやってください。ありがとうございました。」
坂本さん「border:3の素子は、今まで誰も見たことのない姿を見せてくれました。けっこう公私混同しちゃうんだなとか、けっこう隙だらけだなとか、ただの女だなとか思えたことで、もっと生々しく素子を好きになれたと思います。1〜3を見るほどに4の味わいが増すと思いますので、またお会いできる時までじっくり楽しんでください。今日はありがとうございました。」
『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』は、6月28日より2週間限定で全国劇場上映中。シリーズ最終話となる『border:4 Ghost Stands Alone』は、9月6日上映開始です。黄瀬総監督が「一番攻殻らしい世界観になっていると思う」という作品で、9人そろったメンバーがどんな活躍を見せてくれるのか、ついに動き出す「公安9課」に期待が高まります。
『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』
2014年6月28日(土)全国劇場上映【2週間限定】
■公式サイト http://www.kokaku-a.jp/
(c) 士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会』
(記事 笠井美史乃)
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