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放送から15年、改めて知る作品の強さの裏側 ボンズ20周年記念展「鋼の錬金術師 SPトークショー」レポート

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2018年10月26日から11月25日まで、1ヶ月間に渡って東京・市ヶ谷の東京アニメセンターで開催された「ボンズ20周年記念展」。その最終日を目前にした24日、同会場にて「ボンズ20周年記念展 鋼の錬金術師 SPトークショー」が行われました。



会期前半の展示会場では、同作の原画や背景画、


等身大アルフォンスも展示されました。

■衝撃的だった第7話、スタッフの思い入れも強く

2003年の『鋼の錬金術師』(以下、ハガレン)アニメ化から早15年。いま改めてお話を聞けることの期待感に、多くのファンが詰め掛けました。イベントでは初めに本編から第7話「合成獣(キメラ)が哭く夜」を上映。久しぶりに当時の衝撃が思い起こされたところで、トークが開始されました。

登壇したのは、水島精二監督、ストーリーエディターの會川昇さん、キャラクターデザインの伊藤嘉之さん。司会はボンズのプロデューサーで、同作アニメ化企画を立ち上げた一人でもある大薮芳広さんです。


壇上左から大薮芳広さん、水島精二さん、會川昇さん

登壇者の皆さんも7話を見るのは久しぶりとのことで、水島監督は「こんな伏線が張ってあったんだ」と振り返って驚いた様子。「上手な脚本だ(笑)」と笑う會川さんを揶揄しつつも「必要なシーンしかない」(水島監督)と重ねる密度の濃さです。

この回はシリーズ前半のターニングポイントと言えるエピソードで、アニメージュ誌の「アニメグランプリ」ではサブタイトル部門第1位に選ばれるなど、多くのファンの注目を集めました。またスタッフ側も、この話数にかける思いが非常に強かったといいます。

描き下ろしイラストを使った特殊エンディングにもその思いが現れています。これはエンディングのイラストを担当されたアニメーター 鈴木典光さんが、絵コンテを読んで「この話数はエンディングを変えたい」と発案したことがきっかけだったそう。水島監督も「できるなら」と賛成してそれが実現し、実際の放送でも非常に効果のある演出になったため「鈴木さんナイス!」と思っていたところ、なんと後日監督に非難が集まる結果に!?

水島「ただでさえ本編で(気持ちが)ギュッてなっているのに、(ニーナたちの)幸せそうな姿ををわざわざ見せつけたりして、なんて性格の悪い監督なんだ! と言われたのを覚えてます(笑)」

ボンズの中で同作アニメ化の企画が立ち上げられたのは、2002年8月頃。伊藤さんが表紙買いして持っていたコミックを大薮さんが読み、「面白いね」という話をしていたことが最初のきっかけでした。当初は伊藤さんも「アニメ化が決まったら俺がキャラクターデザインやってやるよ」と軽い気持ちで話していたそうですが、それが実現したというわけです。

水島監督も元々原作を知っていたそうで、7話に当たるエピソードを読んだことで、ボンズの南代表から監督をやらないかと打診があった時に「これはやりたいと思った」(水島監督)とのこと。しかし問題は、原作がまだやっと3巻だったこと。当初は26話構成の予定でしたが、それでも原作をきちんと解釈した上でオリジナル要素を入れてまとめていける人が必要、ということで會川さんに脚本を依頼したという経緯が語られました。

■「少年の成長」をお題目じゃなくリアルに表現

続いて第25話「別れの儀式」の終盤、墓地でのシーンの話になりました。こちらも、もうひとつのターニングポイントといえるエピソードです。7話と同じく重さのある回でしたが、話数を重ねることで違いも出てきています。

會川「伊藤さんの絵が、今見ると劇場版に近いような、ちょっとリアルな方向にキャラを作り始めている感じですね。1クール目よりも人間性が強くなってきている感じがしました」
伊藤「どんどん話が進むごとに、キャラクターが勝手に成長していっている感があったので」
水島「キャラ表、作り直してましたもんね」
會川「僕がハガレンを引き受けた時にやりたかったのは、少年の成長ものというのがお題目でなく”ちゃんと成長する”ということだったんです」
水島「それを言われて伊藤さんに相談したもん、どれくらいだったら年齢の描き分けができるものですかって」
會川「難しいのはわかっていましたけど。でも今見ると、さっきの7話は(25話のエドより)ちゃんと幼いというか、描き分けが成立していて感心しちゃいました」

アニメーターによって絵にバラツキは出るものですが、伊藤さんの作監を通すとバランスがうまく整理されるので「これは年齢の描き分けができる」と思ったという水島監督。ボンズで初めての4クール作品を作り切る上でも「伊藤さんがすごくペース配分のできる人で、すごくクレバーだと思っていました」と、当時から大きな信頼を寄せていたことを語りました。また、脚本の面では小さなシーンが後で伏線として回収されることを信じて、ほとんど削らずに入れていたと言います。

水島「(會川さんは)原作の要素を解体して、それを改めて作用するように組み立てて行きますよね。シナリオが長くて尺に収まらないからこのシーン落としていいかな、でも落とすと後で支障が起きそうな気がする、しょうがない圧縮して入れよう…と散々やっていたら、ちゃんと後で拾われていて。なるほどこれは信用して全部入れるしかないんだと思いながらやっていました」
伊藤「會川さんの脚本は他の作品もそうですけど、すっかり忘れてなかったことになっていたようなことさえもちゃんと拾って丁寧にまとめていくので、それが毎回すごいなと思って見ていました」
水島「各話で見ると要らないように見えるところも、だんだん怖くなって全部入れようと。だからシナリオを圧縮する力がすごくつきました(笑)」

当時感じていた作品の強さや勢い、長くファンに支持され続ける作品になったことの裏側には、こうしたスタッフの方々の力があったのだと、改めて垣間見ることができました。色々な裏話・思い出話、そして伊藤さんのライブドローイングと、ファンにとってもうれしい内容のイベントとなりました。

最後に、水島監督は「ハガレンは僕にとっても非常に思い出深い作品で、15年経った今も『鋼の水島さん』と言われることもあります。今後も何か一緒にやれたらいいなと思っていますので、これからもよろしくお願いいたします」と述べました。今後の作品もぜひ楽しみに待ちたいと思います!


登壇者サイン入り伊藤嘉之さんによるイラスト

■TVアニメ「鋼の錬金術師」公式サイト https://www.hagaren.jp
© 荒川弘/スクウェアエニックス・毎日放送・アニプレックス・ボンズ・電通2003

(記事 笠井美史乃)

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