“地続きの未来”だったSACに、現代の影が映るとき そこ☆あに『攻殻機動隊 SAC_2045』特集まとめ

今回は、Netflixで独占配信中の『攻殻機動隊 SAC_2045』特集です。スカパーの有料チャンネルで始まった神山健治監督による「SAC」シリーズの続編が、時代を経てNetflixにやってきたという状況も含めて、2020年らしい復活となりました。ビジュアルへの違和感はありつつも、SACらしい社会風刺はしっかり健在でした。

そこあに「攻殻機動隊 SAC_2045」特集 #634
「そこ☆あに」634回目は『攻殻機動隊 SAC_2045』特集です。原作は士郎正宗による1989年『ヤングマガジン海賊版』に掲載されたSFマンガ作品。「2045年。全ての国家を震撼させる経済災害「全世界同時デフォルト」の発生と、AIの爆発的...

■期待値高めで待ってましたが、正直どうでした?
くむ「SACの正当な続編となると、それはやっぱりめっちゃワクワクしますよ。ただ、最初のキービジュアルを見たときに、ん?とは思いましたけど」
那瀬「あえて聞きます、どのあたりが?」
くむ「まあそれはね…今回は3DCGですけど。3DCGが悪いんじゃなくて、キャラクターデザインが変っちゃってるじゃないですか。素子がめちゃカワですよね」
那瀬「こんな可愛い人だったっけ?とは思っちゃいましたね」
くむ「ARISE的な立ち位置の、また別の物語を作ろうとしているのかなとも思ったので。見るまではわからないじゃないですか。それで、インタビューなどの前情報はほとんど入れずに、配信が始まってすぐに見初めて、これはちゃんとSACの続編だな、ということでめっちゃ興奮して、8話までとにかく見続けました。とりあえず、初見は絶賛な感じでしたね。ただね、やっぱキャラに関しては違和感はありますよ」
たま「まあそうですよね。だいぶみんな細身ですからね」
くむ「今日、SSSを収録前に見ていたんですけど。やっぱあのイメージがあるわけですよね。それが、細いですよね。全体的に」
たま「そうなんですよ。素子が一番際立って、細身の華奢な女性という感じに見えるんですけど。意外とバトーとかも細身なんですよ、これまでと比較すると」
くむ「ただ、今回はこれで作ろうと決めて作品がスタートしたということは、逆にこのセットがなければ作品が作られなかった可能性があるのかもしれないと思って。まあ私としては物語が面白ければいいかな、くらいに思いながら。ある程度、今の時代だったら乗っかって行かなきゃいけないのかなと、思って見ていました。だから、最初の数話はすごく違和感あったんですけど、後半に行くについれて慣れてはきたので、こういうのは慣れかなと思ったんです。で、8話から数日開いて残りを見たときに、すげえ違和感だなと思ったので(笑)、慣れるとはいえ、やっぱり見続けないと慣れないな、とは思いましたね」

■まだ見ていない人におすすめするとしたら、ポイントは?
那瀬「私は自分のことを、攻殻を見ていないに近いと認識しているんですけど、それでもイメージはあるじゃないですか。サイバーパンク代表みたいなところとか、電脳化とか。そういう断片を知っている人にとっては、すごく入りやすいシリーズだったと思いました。『これが攻殻か』をソフトに味わえたかなと思いましたね。やっぱりSACはシリーズが長いから、見た方がいいと思いながら見ていないんですよ。でもなんか、ちゃんと興味を持てました」
たま「デザインを変えたこととかも含めて、入り口になる作品として、よかったんじゃないかなと思いますね」
那瀬「そうですね。押井版とかはビジュアルも90年代だと思っちゃうんですよね。その抵抗感が、新しいデザインにしたことである程度払拭されたというか。最近のアニメに慣れている人には入りやすい味付けにしてもらえているなというのはわかるので。全然知らなくても、最初として見られるシリーズになっているとは思いました」
たま「これまでのシリーズとめっちゃ関わりが深いようには見えないから。実は続編なんですけど。なので、長期シリーズは入りにくさが結構あると思うんですけど、それを気にせず見れるのはいいかなと思います」
那瀬「続きで見ている人には、公安9課が再編されていくところが、新規にはチームが出来上がっていくストーリーとして見られるので。私としては普通に楽しめましたよ。ワクワク感ありました。なので、先入観を持たずに見て欲しいなと素直に思いますね」

■見ると頭が良くなった気がする神山節再来
仮面「攻殻機動隊って、未来はこんなふうじゃないか、という描写がもともとありましたけど、それが、現実の方が進化していくに従って、未来というよりは“今”を作品に反映させた感じになってきたのが、今回のアプローチとして新しいなと思いました」
たま「この人悪いと思う?良いと思う?という質問に軽く答えたら、殺人に加担していた、みたいな。結構怖い話でしたね」
仮面「自分がどういったものを使っているか、電脳やネットに対してそこまで理解なく使えてしまっているのは、今の世の中も一緒じゃないかなと思いますよね。視界が広告まみれのおばちゃんとか、いたじゃない。ああいう人とかも、自分が何を使っているか、どういう状況にいるか全くわからずに生きているということでしょ?」
くむ「それが当たり前になっている訳ですよね」
仮面「そういう、あなたたちどうですか、みたいな。若干説教くさいようなところも、すげえSACだなと思って見てました」
くむ「それはありますよ。そこポイントじゃないですか」
たま「ですよね。アプリ1個咬ませただけで、人が死ぬかもしれない姿を見ていることに娯楽性を感じてないですか? みたいなことも、これは刺さるねって思いました」
くむ「きましたね神山さん、という感じですよね」
仮面「他の攻殻にはない説教臭さ。そして見た後、ちょっと賢くなった気がする、勉強になった、みたいなところ。ありますよね」
くむ「政治っぽい話とか、社会風刺とか、そういうネタは必ず入れてあるんですけど。それは今回もきちんと入れてきたなと。ただ、過去の作品だともっと未来かな、という話だったのが、今回は結構リアルなところに寄せているなという気はしますよね。いま作るべき攻殻は、こうなってくるんだなと」

ニヒルに社会を風刺しながら、ただ厭世するばかりではなかったのも過去のSACシリーズの魅力でした。現代を色濃く映す「2045」はどうなるのでしょうか。意外なところで終わってしまったので、少しでも早い2ndシーズンの公開を待つばかりです。

(笠井美史乃)

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