時代劇の何が面白いのか、語って進ぜよう。そこ☆あに『鬼平』特集まとめ

毎週放送される時代劇ドラマといえばNHKの大河くらいになったしまった昨今ではありますが、さりとて時代劇らしい“型”や“美”の魅力が目減りしたわけではございません。今回は時代劇をそのままアニメにした『鬼平』特集です。昔ながらのカッコ良さやお約束を活かしつつ、スタイリッシュでテンポの良い今っぽさも魅力。新しい時代劇のスタイル、けっこう良いんじゃないでしょうか。

そこあに「鬼平」 #467
「そこ☆あに」467回目は、アニメ『鬼平』特集です。 原作は池波正太郎による小説「鬼平犯科帳」。映像としては1989年より長きにわたりフジテレビで放送された中村吉右衛門版「鬼平犯科帳」の印象が強いのではないでしょうか。 男気と人情にあふれ、...

■イマドキな感じに再開発された時代劇
くむ「最初にキービジュアルが公開された時、なんかめちゃかっこいい、細い感じのイメージでしたね」
たま「若々しいなというのが最初の印象でしたね」
くむ「やはりどうしても中村吉右衛門さんのイメージが強すぎるので」
たま「みんなそうだと思うんですよね。さいとうたかをの漫画版もあるから、キャラクターデザインはどうなるのかと思っていましたけど、なるほどそうきたかと。ドラマではエンディングにジプシーキングスのスパニッシュギターが流れたじゃないですか。それが池波先生のオファーだったと聞いたことがあって。原作者的にもスタイリッシュなイメージがあったんじゃないかなと思います」
くむ「若い頃の平蔵のかっこいいこと!そりゃみんな惚れるわ、という感じの。落ち着き方もまだ若い感じがいいよね。中村吉右衛門さんは、まさにあれは本当に鬼の平蔵なんですけど、落ち着いて完成されている感じですからね」
たま「壮年期のイメージが長いですけど、ドラマの始まった時が89年と考えると、当時の歳でも全然おかしくないってことじゃないですか。だから若いのはさほど違和感ないんじゃないですかね」

■名優ぞろい! 声の味わい深さもいい
くむ「もちろん堀内賢雄さんはすごいんですけども、それ以外にも」
那瀬「個性的な大御所を連れてきていているのがすごくいい。私は彦十が好きで。飯塚昭三さん、忍たま乱太郎の稗田八方斎のイメージが強いんですけど、ちょっとひょうきんなじじいがたまらなく愛おしいというか。あのキャラクターが出せるのは確かにこの方しかいない、というのをちゃんとはめてきている豪華さがいいですよね」
くむ「演技する人たちはさ、本気でやらなきゃというのはもちろんあるとは思うんですけど、楽しいよね、多分。こんな演技ができる場所って、そんなにあるわけじゃないじゃない」
那瀬「そうですよね! 暗剣白梅香の関智一さんも、ちょっと少年ぽいような最近ではあまり聞けないような芝居でしたし。また高木渉さんの善八が! すごいですよね、改めて高木さんの演技力を知るというか」
くむ「1回ではもったいないと思いながら見ていましたよ」

■短い尺に魅力を詰め込む、けれど……
くむ「実写版とくらべると約半分くらいの尺しかない。それはアニメのスタッフも苦労していると思うんですけど。テレビシリーズを見始めた時に、そこがすごく違和感あったんですよね」
たま「そうですね、もうちょっとじっくり間を見たいエピソードもありましたよね。話を成立させるのに必要な要素は全部拾ってくれているのでお話の面白さには遜色ないと思うんですけど、合間合間に入っていた市井の生活や空気感を表現するような部分がだいぶ減らされちゃっているので、そこをもうちょっと見たいというのがありますね」
くむ「あの時代を生きていた人たち、一般市民の生き様みたいなものが、多分あの世界の説得力みたいなものを与えて、我々を引き込ませていたんだと思うんですよね。でも最新話まで見てくると、このテンポ感も今の時代にあった時代劇としてありなのかなという気がしてきました」
たま「はい。それでもご飯の描写をちゃんと入れてくれているのはすごく嬉しいなと思いますね」
くむ「そこポイントですからね、鬼平は」

日本的な勧善懲悪も、今の時代には新しいヒーロー像なのかも。若い皆さんは一種の異世界モノだと思うと見やすいんじゃないかと思います。前後編や1時間スペシャルをやったり、他の時代劇もアニメ化するなど、展開の余地は大きそうですよね。面白さお墨付きの原作がまだまだ豊富なだけに、続編にも期待です!

(笠井美史乃)

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