大掛かりな伏線を堂々回収したザ・最終回 そこ☆あに『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』特集まとめ

今回は、映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』特集です。劇場公開は今年6月でしたが、内容的にはこの時期がピッタリですね。テレビシリーズで残された大きな伏線をしっかり回収し、きれいに一区切りをつけてくれた、いわば「大きな最終回」となりました。

今回はネタバレありのトークとなっています。以下の記事もネタバレを含みますのでご注意ください。

そこあに「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」特集 #613
「そこ☆あに」613回目は映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』特集です。 原作は電撃文庫「青春ブタ野郎シリーズ」鴨志田一によるライトノベル。TVアニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」は2018年10〜12月放送。原作...

■物語は一区切り…テレビシリーズでここまで見たかったかも
美樹「今回、映画の形で見ることになりましたけど、多分テレビシリーズでもすごく上手に作れたんじゃないかと思うんですよね。ただ、劇場でよかったなというところも2点くらいあって。1つめは、映画作品て心に響くポイントで涙が出たりとか、この作品でもいくつかあったんですけど、最後の最後でぶわっと感情がきて泣かせる作品だなと思っていて。そういうのって映画で体験したい感情だなと思うんです。だから、劇場で見て、最後に泣けて、エンドロール見るっていう、最高に映画やってる! という気持ちになれたので、映画でよかったなと。それと、このストーリーに関わってくる麻衣さんの主演した映画が作中に出てくるわけですけど。その映画の一部かなという映像が、この劇場版の最初のシーンで始まるんですよね。これが、自分もこの映画を見ることで咲太と同じ経験ができるみたいな、追体験のような構造になっていて。だから映画でやりたかったのかと、作った側の意図を感じる気がしました」
くむ「ちょうどタイトルのところですよね。役者としての麻衣さんのシーン」
美樹「1回目見たときはわからないですもんね」
くむ「普通に麻衣さんだとしか思わない。制服違うんだけどね」
美樹「そうですよね、そこ疑問に思わなかったもんな。2回目見た時にやられたなという感じでした」
くむ「これは難しいところで、映画だからこそよかったという部分もあるし、このスタッフなら原作の省かれている部分も含めて、うまく1クールで感動させてくれたんじゃないのかなという気もするし」
美樹「テレビの方がもうちょっといろいろ深く描いて、とかね」
くむ「そうなんですよね。あとやはり、テレビ放送からだいぶ期間が開きましたよね。これ、実はまだ冬が残っている(今年の)1月にやってたら大感動だったよね」
美樹「ほんとに。テレビシリーズがちょうど(去年の)12月で終わって、年明けに公開だったら、うわあ…っていう。そしたらテレビシリーズで見たかったという気持ちはなかったかもしれない」
くむ「ただ、地方で見ていると全国公開ではないのでそうはいかない部分もある。そう考えると、テレビシリーズの結末を劇場版というメリットもあるけれど、デメリットもやはりあるなという感じはしました」

■ひとのために自分を犠牲にしないという決断
美樹「これまでテレビシリーズで見てきた青ブタのテーマ性みたいなものを集約したなという感じがあって。結局、咲太が人を救っていく物語じゃないですか、基本的には。だから、すごく自己犠牲の物語だなと私は思っていて。でも、自己犠牲って度が過ぎると結局自分だけが不幸になっていく感じがして。それじゃハッピーエンドじゃないし。自分のことも大事にしないと、他人のことも大事にできないなというところがこの劇場版で見れて、咲太も幸せになってくれて、本当に良かったなと思いましたね」
小宮「この劇場版でやっと咲太がそこに気付くじゃないですか。ハッピーエンドって、どの視点で見るかによって全然変わってきますよね。咲太の視点でいうと、自分が犠牲になることで翔子ちゃんが救われたりとか、麻衣さん(の幸せ)は、自分が死んだら知る方法はないけど少なくとも死なない。みんなが生きている世界がハッピーだと思って自分の犠牲を選んだ。でもその結末から出てきた未来の翔子さんの影響で、麻衣さんが死ぬという。それは麻衣さんの視点では咲太が死なないし、翔子ちゃんも救われるからハッピーかもしれない。でも咲太にとってはバッドエンドだったわけで。ハッピーエンドとバッドエンドの表と裏、視点の問題なのかなとすごく考えさせられました」
美樹「見ている側としては、咲太なんて自分を犠牲にしても幸せになってほしいという人間だから。そういう意味では全員が幸せな結果になったというところが価値があるなという」
小宮「麻衣さんが死んだことを経験しない咲太ではできない決断、辿り着き得ない結末だったなというのが、全部見終えてすごい感慨深かったです」

■積み重ねてきた人間関係が魅力を底上げ
くむ「たくさん女の子は出ていますけど、咲太に恋心のない子も普通にいることを置いたにしても、どの子とでも幸せになりそうな感じがあるというところが。ぜんぜんハーレムものじゃないですよね」
美樹「そこが面白いですよね。なんか、ザ・ラノベしているのかなと思いながらも、意外と人間関係のバランスがすごい良くて。一極集中で単にモテている咲太ってわけじゃないところが、すごくいいと思うんです」
くむ「私は朋絵も好きだったので。朋絵との関係があの後普通に先輩後輩でうまくいっているというのがいいなと思ってます」
美樹「たまに、朋絵の口癖の『いっちょんわからん』を咲太が言ってるときとか、いいなって思います」
くむ「あれかわいいですよね。ひとつの物語が終わっても、ちゃんと続いていっているわけですよね」
美樹「ひとつ解決しちゃったら、本来は関係しなくてもいいわけじゃないですか。シリーズとしてはまた次のヒロインが現れてくるのに。でもこの作品は関わる人がどんどん増えて、その後もちゃんと意味のある関わり方をしていくというところがいいですね」
くむ「それが恋だけじゃないというところがいいですよね」
小宮「人の関係性ですよね」
くむ「ちゃんと友達しているというところがいいです。中途半端に恋心が見えていたりしないじゃない」
美樹「ちゃんと咲太を助けてくれたりね。そこがいい。キャラクターの魅力があるというのは、作品自体の魅力をすごい底上げしますよね」

キャラクターはもちろん、過去のストーリーがあるからこそ出てくる会話や行動も、作品世界をより立体的に見せてくれています。テレビシリーズを見ていた方は必見ですよ。レンタル配信も開始されていますので、劇場でご覧になった方も見直してみてはいかがでしょうか。

(笠井美史乃)

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