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「原作の印象をいかに再現するか」安藤正臣監督インタビュー そこ☆あに 『彼方のアストラ』特集Part3まとめ

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今週は、2019年夏期に2度に渡って特集した『彼方のアストラ』の3度目の特集です。安藤正臣監督をゲストにお迎えし、作品について今だから聞けるお話しをたっぷりお聞きしました。第1話と最終話が1時間スペシャルになった裏側は? エピローグのあのシーンの理由は? など、アニメはもちろん原作からのファンにとっても気になるトークが満載です!

そこあに「彼方のアストラ」特集Part3 #605
「そこ☆あに」605回目は『彼方のアストラ』特集Part3です。ゲストに安藤正臣監督をお迎えしたインタビューをお送りします。 2019...

■1話ごとに達成感のある区切りを
安藤「ジャンプ漫画・少年漫画らしい青春ストーリーだと最初にちゃんと読ませた上で、後半に大きく話を広げていくという原作の印象をアニメでも同じように受け取って欲しくて。その意味では、出だしでちゃんと青春ストーリーとして面白そうだと思ってもらえるよう、視聴者を最後まで引っ張っていけるかという点は注意した部分ではありました。ただ、これまであまりそういう作品を手がけてこなかったので、こんなに素直な友情・努力・勝利、みたいな作品ができるのかなと…始めるときはこれはちょっと大変だぞと思っていましたね」
那瀬「ラルケさんと安藤監督の組み合わせでいうと、『クズの本懐』や『がっこうぐらし』などのちょっとひねりのある作品というか…(笑)。私もこんなに素直な少年漫画は久しぶりに見た気がします」
安藤「まあ、アストラも最後まで見てもらうとだいぶひねくれた作品であるのは間違いなくて。それこそ、シリーズ構成に海法(紀光)さんを呼んでいる時点でまっすぐな話ではないだろうと予測される方もいらっしゃったと思うんですけど」
那瀬「確かに。『がっこうぐらし』でシリーズ構成をご担当されていた関係もあると思いますけど、海法さんに依頼なさったのは安藤監督ですか?」
安藤「比嘉プロデューサーとも相談した上で、海法さんの人を翻弄するというか、裏切るような作品づくりと、海法さんご自身のSF的な知識の豊富さもあって、大変頼りになるだろうと考えてお願いしました。引き受けていただいて本当によかったと思っています」
那瀬「実際に、制作ではどのような相談をされましたか?」
安藤「やはり一番最初にシリーズ全体の構成について、原作5冊が1クールで収まるかどうかということが課題でした。おっしゃるように、まっすぐで落ち込まないキャラクターたちが、重たいストーリーを若いポジティブさで引っ張っていくお話なので、毎話数、気持ちよく終われるような作品になるといいなという話を海法さんとしまして、それで構成の区切りをつくって行ったんです。結果として毎回結構ぞわぞわさせているとは思うんですけど、何かしら心の落ち着きどころというか、達成感があるような構成にしてもらうことは狙っていましたね」

■瞬発力の発想から、強い意味を持つ演出に
那瀬「(アリエスの)日誌も、原作より意味合いが厚くなった面があったのかなと思ったんです。お母さんに送るという本当に細かい追加ですけど、それによって説得力とか、日誌が日数を刻む以外の意味合いを持ったことに、すごく深みを感じました」
安藤「そうですね。まあ、かこつけましたけどね(笑)。実は考えの順番としてはもうちょっと実作業的な都合もあったんです。原作の楽しい部分や4コマ漫画など、可能なら本編中に盛り込みたかった部分はたくさんあって、それをどうしたらできるだけ消化できるかと考えたとき、エンディングの写真という一枚絵だったら表現できるかもしれないという思いつきが先にあったんですよ。これなら細かいネタもちょっとずつは拾えるだろうと。それが後から、最後の最後でメールを送ってアストラ号がアストラ星に着く前に事件を解決するための材料にするという発想に結びつきました。そこから、先ほどお話しした本人たちの旅の記憶と、作られた歴史との対比にもなるという形で、だんだんと発想が転換していったというのが順番でしたね」
那瀬「そういうアイデアはシリーズ構成をする前に思いつくんですか? SF的な作品だからこそ、これも入れたほうが説得力出るとか、後から加えるアイデアもあったりするのでしょうか?」
安藤「全部後付けです(笑)。お話しした通り、上下の帯(画角の演出)に関しても、最初は映画の表現に合わせようとしたところから後で別の意味合いが出てきたりとか。写真に関しても、できるだけ原作の要素を詰め込むにはエンディングに止め絵で、という発想が先にあって、そこからどんどん意味合いが重なって、強固なアイデアになっていく。自分はそういうやり方でしか、ものが考えられないです。結構、アニメの制作現場ではそういう瞬発力が求められるのかな、と。その場、その瞬間、求められていることに対して、どれだけとんちを利かせて返せるかというのが重要かなと思ったりするので」
那瀬「それこそ、宇宙世紀にどうやって後から入れていく? みたいな話に似ている感じがしますね」
安藤「まさに! 自分のアニメ的な楽しみ方の源流にあるのはそこなので。こうやって原作のあるものだと、どううまく入れ込むかという後付け設定が楽しみだったりします」

■原作になかったシーンに込められた意味
米林「1話で宇宙へ投げ出された後、散らばった荷物の中からカナタがウルガーのカバンを拾って渡すシーンが追加されていました。お兄さんからもらった帽子などが入っていて、ウルガーを表すのに大切なシーンだと思います」
安藤「おっしゃる通り、そうやって伝わっているのが本当によかったなと思います。1話で原作から大きく改変した部分は、最後の手繋ぎ救出シーンでした。お気付きの方も多いと思いますが、原作の表紙が5巻連続でみんなが順番にアストラ号にたどり着いていく絵だったので、その雰囲気をアニメでも描きたいという考えが先行してあったんです。それで、海法さんが手を繋ぐというアイデアを持ってきてくれて。なるほど、手を繋いで帰るんだ、1時間アニメとしての盛り上がりのベクトルを作るんだなと。ただシナリオにはそういう展開だけがあって、もうちょっとみんなが一致団結するまでの手がかりみたいなものを自分的に補強したかったんです」
那瀬「理由づけみたいなところも必要ですね。ウルガーがそこなのかなという気がします」
安藤「B5班はみんなひねくれてはいても根はいい子達だと思っているので、切迫感を盛り上げて、このまま助けられないのか、という状況を突きつければ動いてくれそうな気はしたんです。ただ、ウルガーだけが僕の中でちょっと引っかかっていて。しかも一番最初に慣性を止めるために決死に出なきゃいけないくらいの大役を担わせるには、ちょっと行動理由的なものが必要だなと思った時に、たまたま原作で、出だしはニット帽をかぶっていなくて、途中からかぶるという絵の運びになっている部分があって、これは使えそうだなと思いついたんです。で、カナタに対して借りを作らせるというバランスにしてウルガーを活躍させたと。その内容が後半のウルガーの話に繋がるという計算も、やっぱり後から出てきたものですね」
那瀬「私はアニメが先だったので、あの手繋ぎシーンがまさか原作にないとは驚きました。素晴らしかったです」
安藤「ありがとうございます」

SF的に大きな仕掛けのある物語の中で、B5班みんなの明るさ、まっすぐさは、今を生きる私たちにも前向きな気持ちをくれました。それを伝えるエピソードや絵作りにに込められた意味、作り込まれたディテールを知るにつれ、もう一度つぶさに確認したくなってきます。特に若い方にとっては、何度も見返すような思い出深い作品になったのではないでしょうか。

(笠井美史乃)

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