今週は、Netflixオリジナルの配信作品『DEVILMAN crybaby』の特集です。テレビ放送やソフト販売が(少なくとも現時点で)ないNetflix配信オンリー、しかも全10話を一挙に、その上全世界へ同時配信という、これまでのどこにも属さないスタイルで私たちに届けられた作品。地上波ではできない、劇場版では描ききれない、トガった表現と底なしに深い感情を描いたとんでもないエネルギーを持つ作品でした。
今回もたくさんのコメントをいただき(海外からも!)、ありがとうございました。トーク内容には最終回までのネタバレを含みますので、ネタバレなしで楽しみたい方は、25分頃まででいったんストップするのがおススメです。
■ピーキー&ドラッギーの刺激物タッグ
蒔田「永井豪作品のピーキーな部分って、風の噂で流れてくるじゃないですか。そういうショッキングなところばっかりあるんだろうなと思って見たわけですよ。それが、ここまで表現で訴えかけてくる物体だと思っていなかったので。むちゃくちゃショックで吐きそうになった」
那瀬「まさに。ピーキーという言い方をされたけど、もう一つ、湯浅政明監督作品はよくドラッギーという言い方をされるんですよ。だから、ピーキー&ドラッギーという点では、すごく永井豪さんと湯浅監督の親和性がめちゃくちゃよかったんだなと感じられました。最近、湯浅監督は劇場作品が2作続きましたけど、ドラッギーにしてもアメちゃん的というか、美味しい甘いもの、子供も大人も食べられるものという感じがしていたんですよね。でも、ドラッギーと言われていたのはそれよりも少し前の作品、『マインドゲーム』や『ケモノヅメ』という、結構エログロを押し出した作品だったんですけど。そこへの回帰を感じた作品でしたね。だから最初、これは大丈夫か?と。どれくらいの人に受け入れられるんだろうと、思ってたんですよ」
蒔田「ウルトラ刺激物だからね」
那瀬「そう! すっごい飲みやすい食べやすい、危ない、危険物だと思います。でも蓋を開けたらほんとにいろんな人が見て感想をつぶやいているのを拝見するので、改めて、作品力を感じていますね」
■本質はそのままに、現代風のテンポと設定
那瀬「第1話は冷静に考えるとすごい色々ぶっ飛んでいるんですよ。だって、了の登場の仕方とか、相当突拍子もないじゃないですか」
くむ「ギャクマンガですよ、一歩間違えば。おそ松さんですよね」
那瀬「あの引き込み方が本当にドラッグなんだなとも思うし。すごいいろんなところに違和感を覚えさせる1話じゃないですか。陸上部の先生も最初から不穏だし」
くむ「あいつヤバいだろう、どう考えても」
蒔田「もういっぱい“いる”じゃん!と思って」
那瀬「もう一つ、1話で一番びっくりしたのが、ラップ。あれも急でしょ。まさに、湯浅監督節というか。現代への置換という意味で、ラッパーグループって原作でいうところの番長グループなんですよ。いや、すげえ!と思いました」
くむ「今、番長って伝わらないだろうしね」
那瀬「でも本質は確かに一緒というか。こいつらに絡まれたくないという存在だけど意外といいヤツじゃん、みたいなところもある。これは世の中の本質を見抜いていないとできないよねって思いましたね」
たま「あの時代の、現行の体制にちょっとつっかかっている若い人っていうのが番長であるならば、ラッパーは現代への不満などをラップにするわけじゃないですか。感謝とかもありますけど。内容聞いていても結構そんな感じだから。ラップに置き換えというのはなるほどなと思ったんだよね」
■攻めてる作品が生まれる場になるのか、Netflix
くむ「(Netflixで)世界で配信すると判断されたというところがね。海外でもちゃんと見れるというのはよかったんじゃないですかね」
那瀬「Netflixの自由度もこれで広がったんじゃないですかね」
くむ「こういうことをやりたければ配信でやれるんだ、というのがわかったことがすごいと思いますよ」
那瀬「Netflixでやりたがる人も増えるんじゃないですか。クリエイター側で」
くむ「そうそう。いわゆる深夜アニメの良さはもちろんあるんですけど、言ってしまえば踏み込んだ感じのこういう作品て、もう発表の場すらなかったわけじゃん。劇場しかなったわけでしょ」
蒔田「確かに」
くむ「こういう挑戦的な作品を作ることが可能になったというのは、クリエイターにとって新しい“場所”ですよね。だって、配信自体はだいぶ前からやってるわけだし、アニメはだいぶ見てきたけども、ここまでやられたな!って思うのは、久しぶりでしたからね」
たま「15年くらい前の深夜アニメやパソコンゲームみたいな、トガったことをしたいんだけど普通の媒体ではできないから、ちょっとゆるいことができちゃう場所で、意欲ある人たちがいろんなものを作ってきたような。Netflixがそういう場になってくれたらいいなとすごく思いました」
(笠井美史乃)