6月22日、『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』の初日舞台挨拶が都内の劇場で行われました。登壇者は、草薙素子役の坂本真綾さん、総監督・キャラクターデザインの黄瀬和哉総監督、シリーズ構成・脚本の冲方丁さん、今回の監督・絵コンテを担当されたむらた雅彦さん、今作の製作総指揮を執るプロダクションI.Gの石川光久代表取締役です。
左から、石川社長、冲方丁さん、坂本真綾さん、黄瀬和哉総監督、むらた雅彦監督。両脇はPacific Fairies(レースクイーン)の有馬綾香さん、武田あやりさん
劇場版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』が公開されてから18年目となる今年、新しい”攻殻”を目指して作られた『攻殻機動隊ARISE』は、これまでの攻殻以前の世界で公安9課誕生を描く物語。石川社長は、日本以上に海外で支持されている攻殻機動隊という作品を改めて制作するにあたり、最初に取り組んだのは「世界で戦えるスタッフを選ぶ」ことだったと言います。
石川「クェンティン・タランティーノなどの映画監督から、『アニメーションのアクションをワンカットで書ける日本のアニメータはとんでもなくすごい』とさんざん言われた。それで、今回は黄瀬を総監督に置いて、日本のアニメーションで世界に打って出ようと。」
脚本については、さらに早い段階で取り組んだそうです。
石川「ドリームワークスと攻殻の脚本家チームが話す機会があり、なんだかんだ言ってもストーリーが大事だと教えられた。だから、ARISEを作るにあたって、脚本はどんなことがあっても冲方さんにやってもらうしかない。そのために、いかに断りにくい状況を作るかが最初の一歩。」
最初から決め打ちで口説きにかかった石川社長。冲方さんのお話しによると、その手段は相当な策略家ぶりです。
冲方「六本木ヒルズの会員制レストランに突然呼び出され、『ここの親子丼が旨いから食いたまえ』と。単に食事をするつもりで行って、旨いですねと言っていたら『これも旨いよ』と、士郎(正宗)さんの資料がドサーッ!と出てきた。」
会員制なので自分一人で店を出ることもできず、周囲はI.Gのプロデューサーばかり。悩む余地を一切与えないシチュエーションに一人置かれながら、しかし、石川社長の”本当に作るんだ”という熱意と真剣さを感じて「ここで逃げるわけにはいかないと思わさせられたのが、石川戦術なのかもしれませんけど」と自覚しつつも口説き落とされたそうです。
音楽をコーネリアスに依頼したのも、日本から世界へ出すことを考えてのこと。
石川「攻殻の音楽を作りたいアーティストが世界にたくさんいる中、音楽担当の石川(プロデューサー)さんから『日本発で、世界で勝負できる人』としてコーネリアスが推薦されました。」
最終的にそれを決定したのは黄瀬総監督。映画音楽はほとんど経験がありませんでしたが、結果として新鮮な印象を与えてくれるものになりました。
黄瀬「もともとコーネリアスはよく聞いていました。多少は心配もありましたけど、上がってきたもの聞いたら良かった。」
今回のシリーズは全4本、各話に監督を立てて制作する形になっていますが、border:1を担当したのはむらた雅彦監督。以前から『NARUTO 疾風伝』のテレビシリーズなどで活躍され、昨年の劇場版では監督も務められました。
むらた「アクションを長いシーンでじっくり見せられるのは攻殻機動隊ならでは。絵コンテではそれを考えて作りました。また、作画監督の西尾(鉄也)さん、最後のアクションシーンをお願いした沖浦(啓之)さんなど、素晴らしいスタッフの中で仕事ができて幸せでした。」
こうしたスタッフ陣に加え、今回はキャストも一新されました。
坂本「何の作品のオーディションか、詳しい話を誰も聞いていなかった。合格の知らせを頂いた時に、タイトルを聞いて驚きました。以前、子供の義体の素子役を演じた事を、黄瀬監督がご存知なかったと聞いて、さらに驚きました。それでも再びご縁を結んで頂いたのは、おもしろいなと思いました。」
子供の素子での出演はほんの少しでしたが、攻殻機動隊はご自分で全話買って見るほど好きだという坂本さん。
坂本「キャストが変わることについて皆さんがどう思うかという気持ちも、私が一番よく分かっています。そのプレッシャーに耐えられるのも私しかいないと思っています。」
2作目の公開が11月30日と発表され、早くも期待が高まります。次はどうなるのしょうか? 最後のシーンで素子がつぶやくセリフからも、後の9課メンバーたちの活躍が楽しみです。
冲方「シンプルなコンセプトにしようと思い、考えたのが”かわいい素子”と”かっこいい荒巻”と”かわいそうなバトー”。黄瀬監督と相談して、その路線でいきましょうと。今回、これまでにない素子の表情や姿が出ているんじゃないかと思います。」
黄瀬「詳しくは言えませんが、シナリオやコンテを読んで面白いものになっています。border:1とはまた違う切り口で、ものすごくパワフルな作品になっているので、ご期待ください。」
今回、むらた監督の考えによりミステリー風のストーリー展開となりました。マムロ中佐が本当は誰に殺されたのか、映像ではちょっと分かりにくい演出になっています。その答えが、実は脚本にはしっかり書かれているとのこと。劇場販売限定のシナリオブック付きBlu-rayを入手された方は、その点にも注目です。
『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』のイベント上映は6月22日から2週間限定。また、劇場公開日よりBlu-ray/DVD販売およびオンライン配信が開始されています。
攻殻機動隊ARISE (GHOST IN THE SHELL ARISE) 1 [Blu-ray] 坂本真綾,塾一久,松田健一郎,黄瀬和哉 バンダイビジュアル 2013-07-26 |
■攻殻機動隊ARISE公式サイト http://kokaku-a.com
(c) 士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会