今週は、ただいま公開中『劇場版 夏目友人帳 〜うつせみに結ぶ〜』特集です。最初のテレビシリーズ放送から10周年、初めての劇場版作品となりましたが、これまでと変わらない作品世界に自然と入って行くことができました。その一方で、謎を一つひとつ追いながら真実にたどり着くミステリータッチの展開には、劇場版らしく幅広い要素が織り込まれています。
■テレビアニメ化10周年、変わらぬ世界がそこにある
くむ「今回、夏目友人帳を全く知らない人も、原作からアニメからとずっと追ってきたファンも、途中抜けている人も大丈夫だと思うんですよね」
美樹「ファン歴もそれぞれありますよね」
くむ「最近のテレビシリーズを見ていなかった人でも、見て懐かしさを感じるような作品に上がっていたと思うので」
美樹「ほんと、この導入部分で、夏目は親戚の家を転々とする子で、妖怪が見えてしまうからなかなか馴染めないというのと、劇場版の新しい妖怪が出てきて、友人帳って何だ?というのもあっという間に理解できて。もう、初心者でもこういう物語だというのが簡単にわかるっていう。すごく親切だなと思いますね」
くむ「頻繁に劇場化されているんだったらいいんでしょうけど、そうじゃない以上、初めて見る人とか、久しぶりに見る人は確実にいるわけなので。夏目友人帳という作品はあまり知らなくても、ニャンコ先生を知っている人はいっぱいいると思うんですよ」
美樹「そっちが先行して! ゲームセンターで見たことあるとか」
くむ「という人もいるんじゃないかと思うので。でもそういう人たちが見ても納得できるような作りをしていたのは、やはりうまかったなと思いながら見ていました。最近見ていないからちょっとストーリーわからないわ、という人でも大丈夫です。丁寧に説明してくれます」
■テレビとは違う、劇場版としての魅力
美樹「テレビシリーズも毎話すごく面白いストーリーでしたけど、やっぱり劇場版にするという難しさ。結構長いし、見所がいくつもあるという、映画館で見たい内容にきっちり作ってあるなということにも感動しましたね」
くむ「劇場版の企画がスタートした段階で“気負わない”というのは最初に考えていたらしいんですけど。やはり、上映時間104分、どうやって見せるのか、短編をつなげて行くのか、いろんな考えがあったんだと思うんです。実際テレビシリーズでも2〜3話がまとまっているお話というのは確かにありますし。だからそれを劇場版に持って行けばいいと思ってしまいますけど、そんな簡単じゃないよね」
美樹「30分見て次の週というのと、一気に100分見せるというというのは。やっぱり難しいんだろうなというのは思いますよね」
くむ「それにプラスして、先ほど話したような、初めて夏目を見たとか、久しぶりに見た人にもわかりやすい導入部分も入れてある。でもそれが本編とずれていたら違和感があるわけじゃない」
美樹「急に迫力あるな、どうした(笑)みたいな」
くむ「同級生との関係とか、犬の会(夏目を慕う中級妖怪たち)との関係とか。そういう部分をきちんとストーリーの中で違和感なく見せて説明するというね。うまいなって思いながら見ていましたけども。初期から考えるとキャラクターも増えていますからね」
美樹「確かに、キャラの広がりはありますからね。そこらへんを大きな事件にうまく関わらせていました」
■大きな物語をかたち造るオリジナルキャラクターたち
くむ「夏目友人帳でミステリーを見れるとは思わなかった」
美樹「確かにそうですね」
くむ「そこがね、これは劇場版だなと思わせてくれたかな。劇場オリジナルのキャラクターが出ているでしょ。今回登場した、津村容莉枝と椋雄親子」
美樹「怪しすぎる」
くむ「登場から怪しいんですよね」
美樹「うん、これは見て欲しいです」
くむ「椋雄の怪しさがね。多分テレビシリーズ見ていた人なら、うーん、これはそうなんじゃないかなと」
美樹「こいつおかしいんじゃないかなって、最初から」
くむ「そんな感じを受けるんですけれど。まさかそんなミステリー調に始まったもので最後に泣かされるとは思わなかったというさ。そんな感じはありますね。ちゃんと盛り上がって、劇場版だったなと」
美樹「そうですね。あとは結城大輔、夏目の元同級生。彼も新キャラですもんね。また別の話かなと思いつつも、やっぱり劇場版の核のテーマと全てが絡み合っているという面白さがありましたね」
くむ「テレビシリーズとは違う、一度に見せてくれる作品だからこその面白さにちゃんと繋がっていたんじゃないかなと思います。今後、テレビシリーズに出てくるかどうかまではわからないですけれど、新キャラが物語を動かしてくれたなという感じはありましたね」
優しくて、ちょっと切なくて、教訓めいているわけじゃないけれど、何か残してくれるものがある。夏目友人帳は原作もアニメも変わらずそんな印象を与えてくれる作品です。今回の劇場版もまた然り。作中でモチーフとなっている切り絵の象徴する世界もまた、この作品の本質を感じさせるものでした。ニャンコ先生マシマシも劇場ならではのサービスですね♪ ニャンコ先生好きという理由だけでも、劇場に行く理由になる作品です!
(笠井美史乃)