淡い筆致の瑞々しい恋愛、それが百合であるからこそ そこ☆あに『あさがおと加瀬さん。』特集まとめ

今週は、現在劇場公開中の『あさがおと加瀬さん。』特集です。春から付き合い始めた二人の女子高生が、季節が移ろう中でお互いの想いを積み上げて行きます。そんな二人の物語をそこ☆あに男性陣はどう受け止めたのか? 百合の見方がイマイチわからないという方にも聴いてほしい「百合論」回です。

そこあに「あさがおと加瀬さん。」 #539
「そこ☆あに」539回目は『あさがおと加瀬さん。』特集です。 原作は新書館WINGSに連載されている高嶋ひろみによる漫画「加瀬さんシリーズ」。 OVAが2018年6月9日より劇場公開、現在拡大上映中です。 アニメーション制作は、「少年ハリウ...

■美しい世界に恋と青春を詰め込んだ、素直で優しいラブコメ
くむ「これ、女性同士の恋愛だということを除くと、別に普通に男女に切り替えても同じようなことは起こりうるんじゃないかと思ったんですね」
たま「ですよね。お互いの意識のズレみたいなものとか。すごく男女間でも起こる話だよな、と思いますよ」
蒔田「加瀬さんがだいぶ男っぽいからなのかな。全然成立しそうな感じがするな、というのは見ていて思いましたけど」
くむ「まあイケメンですよ、加瀬さん」
たま「体育会系だから、肉体的に直球みたいなところも込み込みで、男らしいですよね」
くむ「私多分、純粋な意味で百合アニメというのに対しては、どちらかというと苦手意識を持っているんですけど。この作品に関してはそういうのは全く気にせず、青春だな!っていうような。恋あるある、みたいな感じですごく微笑ましく見ていたんですけど。それに合わせた背景と作画と音楽が、すごい素敵に合っていて。より魅力的に見せてくれたかな、という感じがしました」
たま「水彩っぽい感じで描かれた空の描写とかがすごく好きですね。すごくいい感じのところに夕焼け雲だったり、抜けるような青空とかが入ってくるじゃないですか」
くむ「ずっと見ていたい感じがあるよね」
たま「すごく綺麗な世界だなと思ったし。あと、山田が育てている花もいいですよね」

■蒔田氏、「百合」であることの意味が腑に落ちる
たま「女の子同士って男性同士よりも距離感が近い感じがするから。密着しているのが友情なのかそれとも愛情なのかというのが極めて危うい一線だったりするじゃないですか。そこが恋愛にちょっとはみ出る、みたいな。その危うさみたいなものがいいんじゃないかなと、私はすごく思うので」
蒔田「あああ、なるほど。そうか、確かに男女がこの二人の距離でいたらそれは恋仲で」
たま「一歩踏み外したらもう取り返しがつかない。特に押し倒しちゃったりした時って、もうどうにかなるしかないじゃないですか。(この作品の)二人の場合は、笑ってそのまま友達に戻れるわけじゃないですか。友達の距離感に戻ってこれるというか」
蒔田「そうかそうか、そういう意味で百合なのか」
たま「その極めて危うい部分が私は百合イズムなのではないかとかって思っているんだけど」
小宮「いわゆるマリみてが流行ったところから百合って始まっている気がするんですけど、その頃に比べると比較的いろんな種類の百合があるので。今回の押し倒したところとかも、女性だから別にそこまで我慢が云々、というところはないんですよ」
くむ「え・・・? あれはもう我々からすると完全に、わぁ突っ走ってんな! でしたよ」
蒔田「見ていた時はそうだったんですけど、今二人の説明を聞いていると、“戻って来られる”というのは、なるほど同性ならではか、と。そういう意味で百合していたんだなと、俺は今すごく腑に落ちている」

■離れ離れになる…その現実に山田は
たま「(山田が)親の言う通り地元に進学して、加瀬さんは東京で新しい友達とか作って、別れちゃうかもしれないっていうのはわかっていたはずですよ。あのままアクションを起こさなかったら多分自然消滅の道をたどっていたんじゃないかと、ちょっと思います」
小宮「私はどっちかというと加瀬さんの方が山田を好きなんだなとずっと思っていたので」
くむ「そこで入れ替わったのか、と思って。加瀬さんが山田のことをめちゃくちゃ好きなのは見ていてわかりましたけど。でも、どこかでドライな部分というのがあって。山田の方が本気で加瀬さんと離れたくないと思ったのは、三者面談の後、実際に会えなくなる可能性が出てきたところからだったんじゃないのかな。失うことの怖さみたいなものを」
小宮「山田が加瀬さんの気持ちに追いついたなと思ったんですよ」
くむ「ああ、そうですね。加瀬さんが東京の人と電話したりしていましたよね。加瀬さんにとってはぜんぜん悪気はなかったんだけど。それまではどちらかといったら、加瀬さんが山田の行動に対してすぐヤキモチ焼いたりとかを繰り返していたのに。あのシーンからですからね、山田が意識し出したのは」
蒔田「そうですね。ちゃんと認識できたのはその辺から」
くむ「ということですよね。でも、あそこで新幹線に飛び乗ってしまう、あの山田の愛の強さというのか」
蒔田「行動力というか」
くむ「そこまで行動力のある子だったんだ、という部分には驚きましたけど」
蒔田「見ていて気持ちのいいシーンでもありましたね」

高校3年生というちょっと特別な時間に詰め込まれた恋と青春のキラキラ。約1時間という短い作品ですが、キャラクターの繊細な演技から淡い水彩タッチの美術まで、アニメとしての見応えも十分です。お近くに公開劇場のない方も、ただいまGYAO!でEP1「おべんとうと加瀬さん。」を無料配信中(7月20日まで)。また、21日からはGYAO!ストアで全編(3エピソード)配信が開始されますので、ぜひご覧になってみてください。

■GYAO! あさがおと加瀬さん。 話数限定 第1話 「おべんとうと加瀬さん。」
https://gyao.yahoo.co.jp/p/00025/v12742/

(笠井美史乃)

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