細かなこだわりが無意識下で情報の厚みになる – 『宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟』Blu-ray&DVD発売前夜マトーク

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5月26日、劇場版のBlu-ray&DVD発売を記念したイベント「発売前夜マトーク」が都内の劇場で行われました。Blu-ray版の上映に続き、スタッフ・キャスト登壇によるトークイベントが始まると、会場は大きな拍手に続いて敬礼で登壇者を迎えました。

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(右から)出渕裕総監督、西井正典さん、中村繪里子さん

今回登壇したのは出渕裕総監督、チーフメカニカルディレクターの西井正典さん、桐生美影役の中村繪里子さん。司会はヤマトのイベントではおなじみの小林治さんです。『宇宙戦艦ヤマト2199』では本編の頃から数々のイベントが開催されてきましたが、舞台挨拶を含めると今回の3人がイベント参加回数トップ3とのこと。偶然ながら(今のところ)最後のイベントに相応しい顔ぶれとなりました。

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3人が参加したイベントを一覧で紹介

中村さんのイベント出演は、劇場版の告知が始まった2014年以降。本編では第一艦橋のオペレーターの一人でしたが、岬百合亜役の内田彩さんとラジオドラマをやるうちに、キャラクターの肉付けができていったと言います。しかし実際に劇場版の台本を見ると「新しい部分がたくさん出てきた」という驚きが。

出渕監督によると、遅刻魔や艦船マニアといった設定はシナリオを書きながら作り上げていったもの。美影は劇場版の語り手役として登場させたキャラクターではあるものの、その時点では内容は固まっておらず、実は今回ほどのヒロイン扱いにはならなかった可能性もあったと言います。

中村さんは美影を「成熟した部分も詰まっているのに、それを外に出すのが苦手な子」だと分析。何となく距離感が近づいた沢村についても「(バーガーのように)お兄ちゃん的な感覚の人の方が居心地の良いゾーンなので、まだちょっと沢村君が遠いのかな」と考えたそうです。

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中村さん本人は「断然バーガーさん!」

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監督は辞書のような厚みの絵コンテ集(初回限定版特典)を持って登壇

今回のBlu-ray版では、劇場版から数々のリテイクが加えられています。例えば美影のポニーテールについて、キャラクターデザインの結城信輝さんが「最初はリボンだったものをシュシュに変えたのに、後でまたリボンだと言いだした」(出渕監督)ために作中で混在してしまい、そこを全体的に整理したそうです。

また、メカニックや背景では撮影効果によるディテールアップが加えられたり、背景や美術設定の整合性をとるための細かな修正も多数加えられました。一部には出渕監督自身が原画を書いたものもあったそうです。

西井さんは「そこまで細かい話をしてどれだけ分かるかな?」と苦笑いでしたが、出渕監督は「そこに気がついて欲しくてやっているのではなくて、無意識下で情報としての厚みになってくれればいい。そういう部分にキチッとこだわるのがモノの作り方としては正しい思っている」と、約600カットに及ぶ修正に満足そうでした。

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西井さんは精緻なディテールまで分かるアートワーク本に解説を執筆中

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リテイクの細かさに、中村さんも気付かなかった部分多数で驚き!

Blu-ray&DVDと同時に、サントラCDも発売になりました。音楽は「コンテ撮に合わせてレコーディングできたので、転換のところでバチッと決まってくれた」(出渕監督)のは、劇場版ならではのクォリティ。ガトランティスの進軍が太鼓の音であることと、最後の決戦シーンでヤマトのテーマとガトランティスの曲、ガミラスの国歌が三位一体になるところは、監督からの要望でした。

ガトランティスの曲は「DNAにこびりついている」という西井さんは、旧作からの再現度だけでなく「(音楽の宮川)彬良先生の曲がなぜこんなに見事にハマるののか」と、レコーディングを聞いた時の感動を語りました。

イベントの最後に、中村さんは「2014年のアニメジャパンで初めて皆さんとお会いしてから1年ちょっとしか経っていないのに、こんなにも楽しい思いをさせていただいたことを噛みしめています。イベントの後にはまた皆さんにお会いしたいと必ず思うのですが、その願いを皆さんに託したいと思います」と、ファンへの感謝を述べました。

西井さんは出渕監督に「お互い歳を取りましたよね」と声をかけ、「長い間やり続けて、その結果の今があって、皆さんに来ていただけるのは本当に有り難いことだと思っています。またこういう機会があった時に、来てくださる方がいらっしゃれば嬉しいです」と、企画が始まった8年前を振り返りました。

出渕監督も「8年のうち実働したのは4年くらいで、半分は匍匐前進しながらもどうなるか分からないという形でやっていました。でも、僕らスタッフだけが旅をしていたわけではなく、皆さんといっしょに旅をしているというのが本当の気持ちです。お付き合いいただき本当にありがとうございました」と、イベントを締めくくる言葉を述べました。

が、その後も司会者に話を振ったり、『宇宙戦艦ヤマト2199 COMPLETE WORKS』に収録されたシナリオのことを話しだすなど、まだまだ言いたいことは山ほどある様子でした。またいずれ、監督はじめスタッフやキャストの方々のトークをお聞きできる機会があることを楽しみにしたいと思います。

■『宇宙戦艦ヤマト 2199』公式ウェブサイト http://yamato2199.net

(c) 西﨑義展/2014 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会

(記事 笠井美史乃)

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